第384話 金平狸と団三郎狸と本陣狸大明神

真ん中の円形の机には名だたる狸が並んでいるようだ。

狸の前にはそのな前が描かれており、

また会場の大きな画面にも今回の参加者の名前が映し出されている。


円形なので一応上下というのはないわけだが、

今回の中心である隠神刑部を筆頭に、

狸が並んでいる。

今回の狸会議の開催地となっている山口霊神は隠神刑部が祀られているが、

そのほかにも名だたる狸が勢揃いであった。


愛媛の金平狸大宮八幡神社の金森大明神。

愛媛の喜左衛門狸は大気味神社の喜野明神。

徳島の金長狸は金長神社の金長大明神。

香川の太三郎狸は蓑山神社の蓑山大明神。

洲本の柴右衛門狸は洲本八幡神社の柴右衛門大明神。

佐渡の団三郎狸は二ツ岩大明神。

札幌の本陣狸大明神社の本陣狸大明神。

この辺りは神として祀られている狸である。

ほかにも何匹かの狸が座っていた。

それぞれ立派な着物を着ているので威厳がある。


今まで出てきていない狸も祀られているものもいる。

愛媛の金平狸は隠神刑部と近い一族と見られている狸だ。

伊予随一の学者狸と言われている。

なかなか珍しい狸である。


さて、先だっての話では四国の狸が主になるという話であったが、

結局全国から狸が集まることになったので、

日本三名狸と知られている団三郎狸ともこういう機会を持つことになった。


前の世界では団三郎狸は人を化かしていたずらをしたり、

金を盗んだりして豪遊したりするという話もあるが、

困った人にその金を貸したりする人情味あふれる狸として知られている。

佐渡には狐がいないが、

それはこの団三郎狸が追い払ったからだとも言われている。


佐渡に狸は元々いなかったようだが、

前に書いた金を精製するときに使う吹子ふいごを作るために、

狸を皮を使うために養狸をするために持ち込まれて広がったという話があり、

それが団三郎だったという説もある。

この話は佐渡奉行代々記に記載されている。


そして札幌の本陣狸大明神。

これはまた異色の経歴を持っている狸だ。

前の世界で本陣狸大明神社が作られたのは、1973年(昭和48年である)。

札幌の狸小路商店街の100周年を記念して建立された神社である。

この本陣狸大明神はなんと隠神刑部と伊予の瑠璃姫の子供である。


これまた面倒な話ではあるが、るり姫は狸ではない。

戦国時代に米津城を攻められてなんとか城から逃げ延びたるり姫は、

白滝で追い詰められ、

世継ぎの2歳の尊雄丸とともに身投げをしたという伝説が残っている。

四国の姫の話を使いたかったのか、

ここでは隠神刑部の妻として使われている。


さらに本陣狸大明神は證誠寺の証和大明神の娘のかずさ御前と結婚し、

子供が産まれている。

ちなみにこの子供と金平狸の子供が結婚して子供が産まれている。

というめちゃくちゃ複雑な家計が作られている。


狸小路商店街と松山中央商店街連合会は姉妹商店街となって交流しているそうだ。

現代に作られている新しい妖怪、神様であるが、

隠神刑部だって元々は江戸時代のお話だったわけで、

超有名人の稲生武太夫との関係もあるわけだし、

こうやって新しいものが作られていくのも別に悪いことではないのだろう。

そんな若い本陣狸大明神もしっかり机に座っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る