第383話 大狸会場

熱いお茶を飲んでまったり話をしていると、

ようやく準備ができたようだった。


「それではこれから会場の方にご案内いたします。

お土産の方はこちらで保管させていただきますので、

必要なものだけ持ってお越しください」


3人は八千代に連れられて会場へ向かった。

大きな狸の形をした会場が山の中に姿を表した。


「可愛い会場ですね」


「そうなんです。

大勢の狸を収容できるように作られた、

大狸会館です。

妖術で作られておりますが、

へんげの術で作られているわけではありませんので、

そこは安心してください」


前の世界では狸玉袋が千畳敷に大きくなるという話を緑箋は覚えていた。

これは元々は八畳敷で、

金を伸ばして金箔にするときに八畳敷になることと、

金を生成するときに使う吹子ふいごという風を送る道具が、

狸の皮を使いやすく、狸の金玉袋でよく伸びるということから、

狸の玉袋がよく伸びるという話になったという説もようだ。


ちなみに、

たんたんたぬきのきんたまはという歌が前の世界ではあったが、

この歌の元ネタは、

Shall we gather at the riverという讃美歌が元である。

讃美歌になぜこんな替え歌を使ったのかはわからないが、

曲が良かったということなのかもしれない。


3人は八千代に連れられて大狸の中に入っていく。

中は巨大な会場になっている。

これまた円形劇場になっていて、

周りには多くの狸が、

真ん中には円形の机があり、

そこに各地の代表が並んで座るようになっている。


3人は客人であるので、

円形の机ではなく、

来賓席の最前列の席を与えられた。


「ではこちらの方にお座りください」


3人は急拵えだとは思えない立派な会場に少し驚いていた。


「ほんとに大きな会場ですね」


「なんとか間に合わせて作られたようです。

大勢の狸がこちらに集まりますので、

集合できるような会場を作りました。

5000席程収容できるようになっております」


「こんなに大きな会場が埋まるほどの狸が集まるんですね

これは本当にすごいです」


朱莉も色々な会場で催しを行ったりもしているようだが、

この会場もなかなかの大きさだったようだ。

特に代田は人混みに来るのは初めてだったので、

こんなにたくさんの狸がいる場所にきて驚いているようだった。

人ではないので狸の群れではあるが、

たくさんの人や狸が会場に来ている様は圧巻である。


会場の周りの席には多くの狸や人に化けた狸が入り始め、

席が埋まっていく。

そして円形の机のところにも、案内された狸が座っていく。

どの狸も立派な格好をしている。


そして会場が整った。




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