第382話 出店で楽しむ

3人は八千代に連れられて出店にやってきた。

朱莉は先ほど通った時からいくつか目につけていたようで、

楽しそうに店を眺めている。


「こちらはご自由にお受け取りください」


「お金はいらないんですか?」


「はい、全てご提供させていただいております。

私はここにおりますので、

ご自由にお受け取りいただきましたら、

またお越しください」


お祭りのように出店がたくさん並んでいる。

狸のままのものもいれば、

人の姿でお店に立っている人もいる。

お寿司やうどんやそばやそうめんに炊き込みご飯、

まんじゅうやタルトなんかも売っている。

タルトというのはカステラ生地に餡子を巻いたものを切った食べ物である。

竹細工や陶芸品や狸の置物やらのお土産のお店もたくさんあった。


「いやー全部美味しそうだね」


朱莉はとても楽しそうだ。


「それじゃあ手分けしてみんなで運びましょう」


緑箋と代田も一緒になって色々なものを受け取って分けることにした。


「これ、たえも連れてきたかったですね。

お土産に持って帰ってもいいでしょうか?」


代田はたえのことを思って美味しそうなものを持っていきたくなっているようだ、

代田も代田で色々な食べ物があって楽しそうである。


「もちろんだよ。

遼香さんと幽玄斎さんにもたくさん持っていきましょう」


3人は手分けしてお店を回って、

両手に色々なものを抱えて八千代の前に戻った。


「皆さん、たくさんお持ちになりましたね。

では急いで戻ってお食べください」


八千代もまたいくつかものを受け取って、

一緒に元の待合室へ戻った。


「狸の売り物だから、部屋に戻ったら全部葉っぱになっちゃったりしてね」


朱莉が冗談ぽくいうと、

全ての品物が、

葉っぱになることはなかった。

3人はいろんなものに舌鼓を打った。


「ちょうどお腹も空いていたし、

こんなに美味しいものが食べられてよかったね。

特にこのタルトとっても美味しい

カステラと餡子の甘さの中にほんのり柚子が香って

甘さに爽やかさが広がるから、

甘いのに何個でも食べられちゃう」


朱莉は美味しいものを食べられて満足した上に、

タルトも食べてもう満腹であった。


緑箋は鰹のたたきがとても好きだった。

この世界でも鰹は食べられているようで、

魔法で鮮度を保って食べられるので、

もしかしたら元の世界よりも美味しい刺身を食べられるかもしれない。


代田は鯛めしが気に入ったようで、

大盛りの鯛めしを食べ続けていた。

固くて鋭い体の骨もぼりぼり食べている。

貝塚に骨を捨てていた伝説はやっぱり誤りだったようだ。


3人はお腹いっぱいになって少しまったりしてしまった。

しかしそろそろ時間になってきたようで、

八千代が最後に熱いお茶を運んできてくれた。


「もう少しで会場の準備も整いますので、

このあと移動致しますので、

今しばらくお待ちください」


八千代は相変わらず丁寧に対応してくれた。

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