第381話 山口霊神

山口霊神の周りはもうすでに多くの人でごった返していて、

出店も多く並んでお祭りのようであった。

人もいれば狸もいて、

おそらく人も狸が化けているものなのだろう。


少し先へ進むと受付があり、

朱莉はそこで受付をする。

少し待つように言われて待っていると、

綺麗な身なりをした、少女がやってきた。


「本日はよろしくお願いします」


可愛い声で少女が挨拶をしてくれたので、

朱莉と緑箋と代田もしっかりと挨拶をする。


「丁寧な挨拶ありがとうございます。

私は八千代と申します。

今回は私が皆さんをご案内させていただきますので、

何かありましたら何なりとお申し付けください」


丁寧に頭を下げ、こちらでございますと、3人を案内する。

人混みを抜けさらに建物の奥へ進んでいく。

しかしそれでもどこにでも人がいて、

たくさんの狸が参加することになっていることがわかる。


「今回は何名くらい集まるんですか?」


朱莉の問いに八千代が丁寧に答える。


「四国八百八狸などと申しますが、

全国から狸が集まることになっておりますので、

その数は数千以上になるかと思います」


「そんなにですか?」


「はい。もちろんすべての狸が参加するわけではありませんが、

著名な狸は参加させるという話を聞いております。

その狸のお連れもたくさん集まりますので、

かなりの数になると思われます。

四国は狸の本場ですので、四国の中の狸が集まるだけでも相当なものになりますが、

今回はまた特別なものになるかと思います」


そう話しているうちに一つの建物に到着した。


「こちらで開催までお休みいただければと思います。

人間に化けている狸も大勢おりますので、

目立つことはないと思いますが、

問題がありましたら即駆けつけますので、ご安心ください」


八千代がそう説明してくれている間に、

他の狸がお茶やお菓子を用意してくれて運んできてくれた。


「今回の狸会議は全員入れるような建物はございませんでしたので、

新たに建物を新設いたしまして、そこで行われます」


数千人が入るような大きな建物を親切というのはこれまた大変である。


「そんな大きな建物を作ったんですか?」


「そうです。と言っても妖術で作られておりますので、

外見の立派さに反して、

中身はスカスカだと思います」


急拵えで作られた建物ということだろう。

それにしてもそれだけ巨大な建物を作るというのは大変なことである。

いつの時代も大きなことをやる時に箱物を作るというのは変わっていないのだ。


「時間があるみたいだから、ちょっとで出店を見てきてもいいですか?」


朱莉はどうやらうずうずしていたようだった。


「あ、それでしたら私がご案内いたします。

皆さんで行かれますか?」


ということでせっかくなので結局3人揃って出店に行くことになった。

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