第380話 狸会議へ

四国行きの当日、

緑箋、代田、朱莉の3人は鳳凰寮から出発した。

3人同じところに住んでいるので便利である。

遼香とたえはお留守番ということでみんなを見送ってくれた。

遼香は笑顔ながらも、

くれぐれも油断しないようにと釘を刺したので、

3人は緊張感を持って四国へ行くことになった。


3人はまず四国の松山城へ飛んだ。

前の世界で言えば江戸時代以前の天守が残っている12の城のうちの一つである。

山の上に建てられた城の前にはしっかり堀が巡っており、

難攻不落の城である。


松山城は1602年(慶長7年)築城を開始し、

1642年(寛永19年)に創建当初5重の天守を3重に改築。

しかし1784年(天明4年)に落雷により焼失してしまうも再建し、

1854年(安政元年)に天守が完成しこれが今に伝わっている。

難攻不落の堅城も空からの雷には敵わないのだ。

避雷針や火災防止の試みはされているが、

魔法の世界では対空防御魔法が張り巡らされているため、

なかなか雷では消失しないようになっている。

魔法があるので再建もやりやすいのもあるが。

この世界の松山城も見事なものである。

防衛時には役にたつところではあるので軍の所有として、

今も管理されている。

国内の戦には使われることはないため、

たまの行事では観光できる城となっているようだ。


「やっぱり城はいいね。

厳かで威厳があって、

やはり力が感じらるからね」


朱莉はお城を見ながらそう言った。

城は風水に則って作られているため、

やはり魔力とも関係が深い。

龗も喜んでいるようだ。


「そういえば龗は連れてきても本当に大丈夫なんでしょうか?」


龗はいつもの定位置でゆっくり寝ている。


「犬じゃないから大丈夫だって言ってたし、

龗が暴れたりしなければ平気だと思うよ

いきなり大きくなられたりしたら困るけど、

龗は大丈夫だよね」


朱莉は龗の頭を優しく撫でながら話す。

龗も気持ちよさそうにしている。


「代田さんはどうですか?

四国は初めてですか?」


「私の記憶が確かならば、

日本に行ったことがない場所はないんじゃないかな」


前の世界では、

九州では大人弥五郎おおひとやごろうという巨人の伝説が残されており、

四国でも手洗鬼てあらいおにというダイダラボッチの子分とされている、

巨人の話が香川に残されている。

大きな何かができた原因として巨人が生まれて、

各地に話ができているのだろう。


「じゃあここからもう少しあるから、

先に進みましょう」


今回は松山城の観光は置いておいて、

3人は松山城から南下して今回の狸会議が行われる場所、

隠神刑部が祀られている久万山を目指す。

松山城を守っていた隠神刑部が祀られることになった場所である。

こちらの世界では隠神刑部の本拠地ということになっているようだ。

平坦な市街を抜けると山になり、

山の中腹の山口霊神に到着する。


山口霊神自体は小さいお堂だが、

その山の奥には大きな建物がいくつも並び、

他の木の総本山としての迫力をもつ山になっていた。

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