第377話 證誠寺の狸囃子とかちかち山

日本三大狸話の最後に残ったのが、

證誠寺しょうじょうじの狸囃子である。


昔々、證誠寺の近くの森で、夜になると妖怪が現れると噂になっていた。

そこに新しい和尚がやって来ると、

森には本当に一つ目小僧や ろくろ首などの妖怪が現れた。

しかし和尚は妖怪たちに全く動じなかったため、

狸たちは、腹鼓を打ちながら狸囃子で和尚を驚かせようとする。

和尚はそれに負けじと三味線で対抗し、

和尚と狸たちは歌って踊って楽しんだ。

4日目の晩、和尚が森へいくが、

森は静まり返っていた。

翌朝になって森を調べると大狸が腹を破って死んでいるのを見つけた。

和尚はその狸を丁寧に埋葬すると、

狸たちもイタズラをやめた。

というなんとも悲しいお話である。


この證誠寺も千葉県木更津市に現存している。

この狸囃子の話が有名になったのは、

1924年(大正13年)に、野口雨情が作詞、中山晋平が作曲して発表された、

証城寺の狸囃子である。


證 證 證城寺

證城寺の庭は

ツ ツ 月夜だ

皆(みんな)出て 來い來い來い

己等(おいら)の友達ァ

ぽんぽこ ぽんの ぽん


この歌詞を見れば曲が浮かぶというくらい有名であろう。

ちなみに證誠寺の漢字が違うのは、

本当に間違っていたとか、

実在するお寺ではないというためだとか、

諸説あるらしい。


これは創作というよりは、

歌によって有名になったという珍しい形である。


ということで日本三大狸話は以上であるが、

最後にもう一つ、狸といえばという話がある。

かちかち山である。


昔あるところにいたおじいさんとおばあさんは、

庭を荒らす狸に困っていて、罠をかけてなんとかタヌキを捕まえる。


おじいさんは狸を吊るして夜狸汁にして食べると言って畑へ向かった。

狸はおばあさんに、もう悪いことはしないから許してほしいと言葉巧みに騙し、

自由になった途端におばあさんを殺して鍋に入れてしまう。

狸はおばあさんに化けると、

帰ってきたおじいさんに鍋を食べさせ、

それはばばあ汁だと罵って逃げていく。


おじいさんは中のいい兎に相談すると、兎が狸を懲らしめにいくことになる。

兎は狸を金儲けだと言って柴を買って背負わせ、

兎は後ろで火うちいしをカチカチと鳴らして火をつける。

カチカチという音を不思議に思った狸に対してうさぎは、


「ここはかちかち山だから、かちかち鳥が鳴いているんだ」


という。

狸はその言葉に騙され大火傷をおってしまう。

兎は狸に大火傷の薬だと言って唐辛子味噌を渡し、

それを塗った狸は悶絶する。


火傷が治った狸に兎は漁に誘う。

木の船とそれより大きな泥の船を用意して選ばせると、

欲張りな狸は泥の船を選んでしまう。

出航すると泥の船は沈み始め、

助けを求める狸を兎は艪で沈めた。

狸は溺れて死んでしまい、

兎はおばあさんの仇を討つことに成功したのだった。


という恐ろしい話である。

この話自体も原典という文書は残っておらず、

語り継げられてきたものが、江戸時代にまとまった形のようである。

この辺りは不思議な狸というよりも、

人間にあだ名す悪者という感じで、

なかなか今までになかった、

ある意味現代に通じるような恐怖話である。


このように狸の話にはいろいろな種類があり、

一つにまとめられることはもちろんできないが、

それだけ人間と密接な関係にあったということが窺い知れるわけである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る