第375話 四国の狸事情

四国の狸は比較的人間とうまくやっているものが多く、

どちらかといえば人間に仇なす妖怪というよりは、

人間のように人情に熱い妖怪として描かれているものが多い。

多くの狸を従えて人間と戦うというよりは、

それぞれがしっかりまとまって教育を行って成長するような妖怪である。


「緑箋君の疑問はもっともだけど、

今の四国をまとめているのは隠神刑部だね。

ただ隠神刑部が全てをまとめているというよりは、

太三郎狸、金長狸、六右衛門狸の一派があって、

それが隠神刑部を中心にまとまっているという感じかな」


合議制のようなものになっているのかもしれない。


「四国の狸を中心に、

各地の狸とも繋がっていて、

狸は日本全国で一大組織としてかなりの力を持っているんだよ。

狸は化けるのが得意だから、

人の姿になって人間と共に暮らしている狸もたくさんいる。

もちろん軍にもたくさんの狸がいる。

他の妖怪もそうだけれど、

今は全ての日本に住むものたちがまとまって魔族に対抗しようとしているんだ。

それをまとめてきたのが遼香さんなんだけどね」


遼香は手で虫を払うようなそぶりを見せている。

全国各地を回って武者修行してきたのはこういった要素もあったのか、

それともただ本当に戦いたかっただけなのかはわからないが、

緑箋はその両方じゃないかと思い始めている。

別に表と裏の両方を持っていたっていいし、

遼香なら自分の利益と国の利益のどちらも確保したいと思うだろうし、

事実結果がそうなっているのだから、

どんな気持ちでいるのかは重要ではないのだろう。


「まだ話はまとまっていないんだけど、

その狸たちに会いにいくということになると思う。

それぞれの場所に行くかどうかは向こうの都合もあるから、

これから話をまとめないといけないけど、

まあそういうことだから、

緑箋君も代田さんもこのことを頭に入れておいてほしい」


わかりましたと二人は鹿kり返事をした。


「でもまあ結局緑箋君には当てられちゃったね」


朱莉はまだ悔しそうである。


「たまたまですよ。たまたま」


現実問題として前の世界のお話がこちらの世界でどのように繋がっているのかは、

緑箋はまだ知らないわけであり、

もしかしたらもういない妖怪もいるだろうし、

緑箋の知らない結果になっている妖怪もいるはずである。

すでに緑箋の時代には討伐されている妖怪たちも、

こちらの世界では現存して元気に生きているわけだから、

話としては大きく違うわけである。

ただそのあたりは前の世界の話を軸として存在しているのは確かなようで、

緑箋の知識はこの世界でも生きていることは嬉しいことではあった。

とっかかりがあるだけで対処の使用があるというものである。


狸談義に花が咲き、

今の狸の情勢を聞いた後、

また緑箋たちは訓練に戻って行った。

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