第367話 不思議な授業

遼香と朱莉は一旦訓練室を退室して、

自らの仕事へ向かった。

遼香は今日はいいんじゃないかと何度も朱莉に向かって駄々をこねていたが、

朱莉は遼香の背中を押すようにしてなんとか部屋から連れ出して行った。


「また後で来るからな」


遼香はその言葉だけ残していった。

部屋には緑箋と幽玄斎と代田の3人が残って、

新人研修を行なっていく。


「じゃあ武器のことも気になりますが、

代田さんも今日から遼香隊に入られたということで、

緑箋君も重複するところはあると思いますが、

今一度確認ということで一緒に研修を行なっていきましょう」


「よろしくお願いします」


緑箋と代田の対照的な二人の声が重なる。


「一応先ほどまで最初の部分を行いましたので、

その続きから行なっていきたいと思います」


「あの、すみません」


「あ、どうしました代田さん。

何か質問がありますか?」


「あのーもしよろしかったら、

というか軍事機密などがない範囲でしたら、

たえの方も参加させていただくことは可能でしょうか?」


「ああ、そういうことですか。

これからやるところは別に普通に公開されていることですので、

軍事機密などはありません。

もちろん軍隊の訓練のところには機密情報が入ってくることもありますが、

新人研修の間にはそう言ったことはないと思います。

ただ、一旦ちょっと朱莉さんに確認とってみてもいいでしょうか?」


「ありがとうございます。よろしくお願いします。

じゃあちょっとたえを呼んで参ります」


幽玄斎は確認を、代田は部屋を出てたえを呼びに行った。

緑箋はぼーっとして龗と無月を交互に眺めていた。

全然大丈夫だよという朱莉の元気な声が漏れ聞こえてきた。

流石の柔軟性である。

幽玄斎の通話が終わる頃には、代田とたえの二人もやってきた。


「あのー本当に私も聞いてもいいんでしょうか?」


「今朱莉さんにも許可をとったから全然大丈夫ですけど、

むしろあんまり面白くないかもしれないけど、たえさんは大丈夫なんですか?」


「私、学校とか言ったことがなくて、

読み書きは自分でできるようになったんですけど、

いろんな知識を学んだことがなくて、

こういうの夢だったんです」


妖怪に学校や試験があるのかどうかわからないが、

旅館で暮らしていたたえには学校に通うなんてことはなかったのだろう。

学校に通いたくなかった緑箋にはその気持ちはわからないが、

人から学ぶということの大切さや貴重さは、

今更ながら緑箋にも少しはわかってきたので、

たえも代田も嬉しいのだろう。

なんだかとてもバラバラな3人の生徒と、

めちゃめちゃ貫禄がある幽玄斎先生の授業が始まった。


後で様子を見にきた朱莉はこの光景をみてとても喜んで大笑いした。

そして私も受けちゃおうかなと言って、

四人が横に並んで幽玄斎先生の授業を受けることになった。

緑箋は魔法学校の授業を思い出して、

みんなのことを少し懐かしく思った。

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