第366話 武器に選ばれる

「あれ、おかしいですね。うまくいきませんね」


遼香はその様子をみながら、朱莉に星砕を渡した。


「朱莉も星砕に属性魔法をこめて見るといい」


朱莉は星砕を装備する。


「うわー、手にしっくりきますね。

重そうなのに全く重さも固さも感じない。

じゃあちょっと失礼して」


そう言って朱莉も星砕に魔法をかけてみるが、

遼香のように光始めない。


「補助魔法が得意な朱莉さんでも無理なんですか?

光らないっているのはまだしも、

武器に属性魔法がかけられないっていうのもおかしいですね」


幽玄斎はもう諦めて朱莉の成り行きを見守っている。


「私もあんまり武器に属性魔法をかけて使ったことがないけど、

こんなに上手くいかないとは思ってもみなかったなあ」


「なあ?そうだろう。

まあそういうことだよ」


「でた。遼香さんの自慢げな顔。

もう意地悪しないで教えてくださいよ」


「はっはっは。ごめんごめん。

意地悪したかったわけじゃないんだ」


「いや、意地悪したかったはずですよ」


「そんなに怒るな朱莉。

説明するよ。

魔力はどこにでもあるものだけれど、

魔力を全て自由に使えるわけじゃないのはみんな知ってのとおりだ。

単純に言えば、相手の体を自由に動かせるわけじゃない。

ただ相手の同意があったり、

よっぽどの実力差があったりすると操れることもある」


「ってことは武器の同意が必要ってことですか!」


「こらこら、朱莉、先取りするんじゃない」


「仕返しですっ」


遼香と朱莉は笑い合った。


「今、朱莉が言ったとおり。この武器は意思がある。

緑箋君も感じたんじゃないかな?」


「確かに、武器が体に馴染んだというか、

一体感があったというか、

そんな感じがありました」


「幽玄斎もよく知ってると思うが、

達人は武器の先まで神経が行き届いたような感覚があるという。

刀の先に触れている感触があるという話があるね」


「そうですね。

刀と一心同体になって初めて一人前という話もあります。

刀の先から相手の気配を感じ取ることもできるそうです。

僕はまだまだその域に達してはいませんが」


「だからおそらくこの武器には意志がある。

おそらく大江山の人たちはこの武器に魔法を使ったことがなかったから、

今まで誰も気がつかなかったんだろう。

煌輝石の作用なのかどうかはわからないが、

おそらくは煌輝石の武器には同じようなことが起こるんじゃないかと思うよ」


「ということは星砕も無月も他の人には扱えないっていうことですか?」


「まあ武器としては使えるだろうけど、

能力を全て引き出して使えることはないだろうね。

初めて魔法を込めた人の所有物になるという可能性もあるが、

感覚的には武器に選ばれているような気がするよ」


「古今東西武器にもいろんな話がありますが、

武器に気に入られるとは、二人ともすごいですね」


朱莉は星砕を遼香に返しながら星砕を見つめている。




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