第365話 遼香が気づいたこと

食事が終わり、みんなはたえにお礼を言いながら、

お皿を片付ける。

お皿は魔法でさっと綺麗になるので、

いつ見ても緑箋はこんな便利な魔法があるとはなあと感心している。

料理を作る時間はそれほど変わらないこともあるが、

魔法を使えば一度にたくさん作れるのは嬉しい。

掃除や洗濯だって、

魔法を使えばきらきらーんと一瞬で終わってしまう。

科学技術も凄かったが、

魔法技術は本当に夢のような世界だなと、

一年経った今でも緑箋は不思議に思っている。


訓練室に一行は戻ると、朱莉が遼香に詰め寄る。


「そうだ、遼香さん忘れてましたけど、

星砕のこと、何に気がついたんですか?」


「まあそんなに近づかなくても教えるから」


流石の遼香も朱莉の圧にはたじたじである。


「単純に説明するが、

今回の武器の新しい効果は煌輝石のおかげかと思ったが、

おそらく魔法銀と後期石の掛け合わせで生まれたものなんじゃないかと思う」


「煌輝石で殴っても効果がない?」


「いやそういうわけじゃない。

煌輝石だけでも効果は高いと思うが、

それが魔法銀と混ざることでより効果がますんだと思う。

魔法銀の魔法効率、魔法伝導効率上昇効果が、

煌輝石の能力にも影響していると」


「流石、察しがいいね。

朱莉の言うとおりだ。

ただ煌輝石の効果が回復効果減少作用ということではないような気がしている」


「それが気づいたことっていうわけですね」


「そうだ。

先ほど示したように、属性攻撃が魔族には効いて、人間には効かない。

つまり煌輝石には魔族特攻効果があるんじゃないかと思う。

初心者の二人には説明しておいた方がいいと思うが、

人間たち、妖怪たちも含めてと、魔族の魔力というのは若干違うものになっている

魔属性、闇属性、なんていう言い方もあるが、

魔族は生まれながらにそういう属性を持っていると考えられている。

それに対して人間は得意属性はあるが、持っている属性というのはあまりない。

妖怪の類にはそういうものもいると思う。

龗なんかは水属性かもしれないな」


龗を見るときは遼香でさえ自然と笑みが溢れてしまう。


「それってすごい情報じゃないですか?

この武器を量産出来れば、

魔族との戦争に終止符が打てるかもしれない」


「まあそうなんだが、

先ほども言ったように、煌輝石の産出自体がまだ少ない上に、

魔法銀との混合についての技術もまだ確立しておらず、

成功例も少なすぎるようだ。

今二つの武器があるだけでもこれはかなり貴重だと言える」


「だったらやっぱり、

この無月は誰か他の人に託したほうがいいんじゃないでしょうか?」


「いや、多分ダメだろうな。

ちょっと幽玄斎、無月を構えてみてくれ」


幽玄斎は緑箋から刀を受け取ると、

無月を抜いて構える。


「気をつけてください、魔力を吸われますから」


緑箋がそう注意するように伝えるが、

幽玄斎は大丈夫そうな顔をしている。


「確かに魔力消費は激しくなっているようですが、

そこまででもないような気がしますよ」


「ちょっと何か属性魔法を無月にかけてみてくれ」


「魔法剣にするんですね。わかりました」


幽玄斎は無月に魔法を唱えるも、

先ほどのように輝くことはなかった。



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