第362話 煌輝石武器に属性魔法を纏わせる

「ちょっと緑箋君、私も戦ってみていいかな?」


遼香はまた同じように敵を設定すると、

星砕に向かって何やら魔法を唱えた。

すると星砕も無月と同じように輝き始めた。


「緑箋君もちょっとみててくれるかな」


そう言って敵に近づくと、

腹に一発拳を当てる。

すると敵の腹が砂に変わって抉れるように砂が落ちていく。


「これはすごい」


「やはり属性魔法の影響が如実に現れるようだな」


基本的に敵の体は敵の体なので、

こちらの魔法で属性が変化することはない。

要するに氷で斬った時に、

敵の傷口が氷で塞がれるということはあるが、

先ほどのように、

敵の体の中まで凍りつくということはない。

周りが凍った影響で体の中が冷えるということはあるが、

直接体を凍らせるということは基本的にはできない。

しかしこの武器は相手の体の中を直接属性に書き換えてしまう効果がある。

これは驚異的なことである。


「真っ二つにした場合、相手が即死することがあり得るってことでしょうか?」


「いやそれは多分ないな。

全てが変わってしまった場合はそれは即死ということになるかもしれないが、

一部でも残っていればそれなりに回復魔法で回復できるから、

即死することはないだろう。

ただ、広範囲の体の消滅となれば、

即戦線復帰することができなくなるわけだから、

その効果は計り知れない。

ただおそらく属性魔法効果がある場合、

回復魔法の減少効果はそれほど出ていないような気がする」


遼香がいう通り、腹にうけた傷は回復魔法で回復しているようである。


「確かにそうですね。

というこは何もしない状態では、回復効果減少、

属性魔法を纏わせた場合、攻撃部位の強制属性変更が起こる、

ということになりますね」


「そういうことになりそうだな。

ただ持ってるだけで魔法消費が半端ないのに、

これに属性魔法を乗せて戦い続けるというのは結構至難の業だな」


遼香のいう通りである。

調子に乗って攻撃しているとすぐに魔力が枯渇する。

緑箋は周りの魔力を取り込むことで自分の魔力の少なさを補っているが、

補う速さと消費する速さでは、

今の所、魔力消費量の方が大きい。

魔力が枯渇しても基本的には時間で回復することができるが、

戦場のど真ん中で魔力が切れたことを考えると、

やはり慎重に使用する必要がある武器である。


「妖刀というだけありますね」


「無月は妖刀だけど、

星砕はそういう名前がなかったな」


確かに妖拳とか妖小手とかいう名前を聞いたことがない。

そもそも拳に装備する武器というのがあまり聞いたことがない。


「でも星砕の方がかっこいいからいいじゃないですか。

遼香さんっぽい綺麗な名前ですし」


星を砕くから綺麗という感じではないが、

語感はとても良い。


「まあそう言われてみればそうだな。

とてもすごい武器をもらったから、

私も大事にしないといけないな。

でもこれから訓練が捗りそうで嬉しいよ。

あ、訓練といえば、もう一つ試したいことがあるんだが」


そう遼香が言いかけた時に、訓練室の扉が開いた。



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