第359話 最後の箱

とりあえず一旦武器の試し殴り、試し切りはここまでにして、

遼香と緑箋がまた机に座る。


「茨木童子、付き合ってもらってすまないね。

本当に素晴らしい武器を作ってくれて感謝する」


「いえいえ、あれだけ見事に使っていただけたら、

みんなも嬉しいと思います」


茨木童子は二人の戦い方を振り返っているようだった。


「では最後の箱の方の紹介もお願いできますか?」


朱莉が話を進める。

茨木童子と緑箋は最後の大きな箱を開ける。


「これは服ですか?」


箱の中身を見た緑箋が白い服を取り出して、

とりあえず一枚ずつ配っていく。


「これはヨーロッパの方で流行っているシャツという肌着です。

綿を使った長袖と、麻を使った半袖のシャツになっております。

どちらも糸に魔法銀を混ぜておりますので、

魔法効果の上昇と、魔法耐性のどちらも兼ね備えたものになります。

着心地も良いかと思いますよ」


「魔法銀が入っているからなのかわからないが、

さらさらとした生地になっているな。

確かに肌触りがよいし、

触っていると魔力の通りが良くなるような感じがする」


「ほんとに遼香さんがいう通り。

触ってるとすっごく気持ちがいいし、

なんか体が軽くなる感じがする」


「こちらの方は今50着ほど持ってきておりますので、

ご自由にお配りいただければと思います。

今の所、魔法銀の産出次第にはなりますが、

順調にいけば、量産体制も整えられるかと思います」


「そうなれば軍の方で買い取らせてもらいたいな」


「ありがとうございます。

こちらの方の着心地や効果などに関しましても、

こちらの方に教えていただけるとありがたいです」


「もちろんです。

そちらの方は私にお任せください」


朱莉が力強く返答した。


「煌輝石の方の防具というのは開発されてないんですか?」


緑箋の疑問に茨木童子は困ったなという顔をしている。


「糸のほうに混入する技術はまだ確立しておりませんが、

先ほどのように鋼に混ぜて作ることはできるようになってきております。

ただ煌輝石自体が貴重なこともあって、

まだ防具のほうに本格的に着手していないというのが実情です。

今回の武器もいくつか作った中からお持ちしたものでございますので、

次にまたいつ使える武器が生産できるのかというのも、

お知らせできかねる状況でございます」


「あ、すいません。

別に急かしたいというわけではないんです。

煌輝石の防具の効果がどういう利点になるのかというのが気になったんです」


「確かにそれもまだ研究中でございます。

身につけるだけで魔力を吸われてしまうというのは不利益なだけでございますので、

その辺りも含めてよいご報告ができるように開発しております」


煌輝石が対魔効果が高いというのはわかったが、

それを防具としてどう生かすのかというのはまた難しい問題であった。

四人は少しそれについて考えるような仕草をしたが、

結局何も浮かばなかったようで、

お茶をずずっと飲んで一息ついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る