第358話 煌輝石の威力

「いや、朱莉、

今切った腕が回復しないというのは、

さっき茨木童子が説明してくれたように、

煌輝石の効果なんだろう」


「あっ。そういえばそうでしたね。

攻撃を受けた後の回復が遅れるという話でしたね」


「そうだ。

だから今回復が遅くなっている、もしくは行えなくなっているというのは、

正しく煌輝石の効果が発揮されているということだ」


「じゃあ、さっきからおかしいといっていたのはなんなんですか?」


「最初の攻撃のことだよ。

私がロケットパンチで攻撃した時、

敵は普通に回復していただろう?」


「ああ。確かに回復してましたね。

ということは攻撃によっては回復されてしまうってことですか?

でも緑箋君の時は最初の時も全滅してしまいましたよね?」


「そうなんだよ。

それが間違いの元なんだ」


「間違い?」


「そう。

緑箋君、ちょっと張り切りすぎちゃったんだよ」


緑箋は遼香に気がつかれていた事を知って少し恥ずかしくなった。


「張り切りすぎたっていうのはどういうことですか?」


「単純に攻撃力が強すぎたってことだよ。

通常なら切られても魔法で回復できるような感じのはずだが、

あまりにも威力が高すぎて、

仮想敵の体力が減りすぎたために、消えてしまったんだ」


「ああ、そういうことですか。

本来なら敵は回復してたかもしれないってことですね。

仮想の敵が上限以上の体力低下を受けて消えてしまったってことなんだ」


「そうそう、そういうこと」


「じゃあ今の腕が治らないっていうのが普通の状態ってことですか?」


「まあそれもある。

問題は遠距離攻撃と直接攻撃の違いってところだな」


遼香の発言に朱莉はまだピンと来ていないようだ。


「要する武器から発せられる攻撃と、直接敵に当たる攻撃の違いってことだよ」


「煌輝石の効果は敵の体に直接触れないと効果がないってことですか?」


「まあ多分そうだね。

一応ロケットパンチにも煌輝石の効果は乗っていると思うが、

そこまでじゃないみたいだね。

むしろ直接攻撃をした時の威力が高いといった方が正しいかもしれないな」


遼香は拳を撫でている。


「この武器の威力を発揮するには、

敵に直接攻撃を当てる危険を取らないといけないってことですか」


「緑箋君の言う通りだね。

まあ素の攻撃力がとんでもなく高いから、

そこまで危険を冒さなくてもいいとは思うが、

まあ最上位の魔族になってくると回復力が尋常じゃないから、

この危険をとる必要があるだろうね」


緑箋はレヴィアタンを真っ二つにした時のことを思い出していた。

真っ二つにされても全く気にしていなかった姿を見ると、

あの驚異的な回復力に対抗できる、

煌輝石の武器の威力は確かに期待できる。

ただまた同じように攻撃できるとは思えなかった。

こちらの力も上げていかなくてはならないと強く思った。




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