第349話 代田とたえと朝食と

翌朝、朱莉が迎えにきてくれたので、

代田とたえと緑箋と一緒に食堂へ向かった。

遼香は自分でどこかで食べるという話だった。


「朝早くからこんなにたくさん人がいるんですね」


たえは人の多さにキョロキョロしている。

まだ朝が早いのでそれほど混んではいないが、

朝は時間との競争なので少しさっき立っている人もいる。


「一応ここはそういうところだからね。

やっぱり厳しいところは厳しいかもしれないね」


食べられるものをお皿に取っていく。

運びにくいものは代田がたえの分も取ってあげている。

そうして準備ができたのでみんな一緒に席に着く。

いただきますと言ってみんなご飯を食べ始める。

子供が二人いるような感じなので、珍しいかと思ったが、

意外と子供づれの人も多くいるようだ。


「ここは個人の家を持ってる人は少ないから、

食堂を利用する人が多いんだよ。

家族も使ってもいいからね。

子供づれの人はあんまりここには配属されないんだけど、

やっぱりいろいろな事情があるからね」


特別な場所ではあるがある程度融通も聞くようである。

じゃなければ代田とたえがいきなりここに来ることもできないだろうし、

新しい鳳凰寮なんてものが建っているということもない。

鳳凰寮に関しては寮になる計画はあまりなかったような気もするが、

遼香がどこまで考えていたのかはわからないので、

あらかじめ計画されていたことなのかもしれない。


食事が終わると、朱莉は一旦たえを連れて鳳凰寮に戻る。

大丈夫ですというたえをしっかり送っていくのが朱莉である。

緑箋は代田を連れて遼香の執務室へ向かった。

すでに代田の机も用意されているということで、

部屋に入ると机の上に代田さんとしっかり名前が書かれた紙を置いていてくれた。


「ここで皆さん働かれているんですね」


「そうなんです。

とは言っても僕もまだほとんどここで働いたことないんですけどね」


考えてみれば、ここにきてまだ数日。

ほとんど机に座ってはいなかったと緑箋は思った。


「今は先輩に教えてもらってるんです。

昨日は僕たちが代田さんのところへ行ったので、

別件で動いていたみたいですけど、

今日は僕たちを教えてくれるんじゃないかなって思います」


「そうなんですね。少し緊張しますね」


代田が緊張をするものなのかと緑箋は少しだけ思ったが、

それは偏見かと思い直した。

そんな話をしていると朱莉が入ってきた。


「あっ、代田さん、席わかったんだね。よかった」


あんなにわかりやすい方法は他にはないだろうと緑箋は思った。


「じゃあ代田さんはちょっと待っててね。

緑箋君は悪いんだけど、ちょっと急用が入ったから、

手伝って欲しいんだけど、いいかな?」


「もちろん大丈夫です。

何か問題があったんですか?」


「あっ、そういうんじゃないから大丈夫だよ。

遼香さんもあとで来るって言ってたけど、

ちょっと迎えに行かないといけないから一緒に来てくれるかな。

代田さんはここで待ってて。

もうすぐ幽玄斎君が来るから、端末のこと教えてもらってね」


「はい、わかりました」


代田は素直に頷いた。

それをみて朱莉は緑箋とともに部屋を出て行った。


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