第345話 初心者訓練の楽しみ

遼香はそういう思い出たえも仲間に引き込んで、

緑箋の訓練に付き合ってもらえるようになった。

今回は代田も初回ということで、

訓練というよりは遊びのように、

魔法の基本からみんなで魔法を打ち合ったり防御したりした。

これは軍の訓練ではない。

みんなが魔法を楽しんで学ぶことが目的となった。


せっかく遼香もいるのに、

もっと厳しい訓練をして自分を追い込んで、

もっと魔法について学んでいきたい、

緑箋は全くそんなことを想いもしなかった。


緑箋もまだ魔法を初めて一年しか経っていない。

超初心者である。

たまたま前の世界で夢想していた妄想が役に立っているだけなのだ。

こうやってみんなと一緒に魔法が使えるということだけで、

本当に楽しい。

たえと一緒に魔法の基礎を学びながら、

一緒に失敗したりして楽しみながら訓練を行った。

その気持ちは遼香も朱莉も一緒だったようで、

みんなは童心に帰って基礎の基礎から魔法を繰り出していく。


「ほら見て、たえちゃん、

私も結構魔法上手いんだよ」


朱莉はお姉さんのようにたえに魔法を見せて分かりやすく解説する。

広報という仕事とはまた少し違ったものであると思うが、

人に噛み砕いて物事を説明するということにおいては同じなのか、

魔法の教え方も上手である。

朱莉の明るさにたえも楽しそうに魔法を使い出している。


代田も魔法自体は慣れたものかと思っていたが、

基礎を習ったわけではないらしく、

自分の得意属性、土属性魔法以外はからっきしダメだった。

その点で言うと、魔法の基礎的にはたえの方が早く上達したほどだった。

すでにある癖を治す方が難しいのである。


「たえがしっかりお見せしますから、

代田さんもついてきてください!」


たえが今学んだことを代田に教えている光景はとてもほのぼのする。

代田も少し困ったような顔をしながらも、

嬉しそうなたえと一緒に真剣に魔法を学んでいっていた。


最後はファイアボールで的を当てて得点をとる遊びを行った。

一列に並んで遠くに現れる的をファイアボールで破壊して、

その得点を競う。


初回。

緑箋と遼香が的が現れた瞬間に全て消していってしまう。

遼香が一番端だったこともあって、

かろうじて緑箋が上回った。

悔しがる遼香と少し喜んでいる緑箋を朱莉が静かに退場させる。


「少しそこで反省しててください」


手を抜かないのが二人のいいところではあるが、

時と場合も見なければならなかった。

遼香と緑箋は部屋の隅っこで膝を抱えて座って、

反省を促された。


先ほどより的の出現数を多くして、

朱莉と代田とたえの3人で勝負を行った。

支援系が得意とはいえ、朱莉も軍人である。

どんどんとマトを破壊していくが、

量が多いので、代田とたえも的確に的を破壊していく。

ファイアボールが苦手な代田と、

初心者だが楽しそうにファイアボールを出せているたえはとてもいい勝負になり、

結果、たえが3個差で代田に勝った。


結果を見て全力で喜ぼうとしたたえだったが、

はっと気がついて、ここは喜んじゃいけないんじゃ無いかと思うその刹那、

代田がたえを肩に抱える。


「いやーすごいなたえ、これは今後楽しみじゃないか!」


たえよりも嬉しそうに代田が喜んでいる姿を見て、

たえも嬉しそうに笑ってありがとうございますと喜んだ。

そしてそんな二人をみて朱莉は笑っていた。


遼香と緑箋は反省し続けた。

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