第341話 遼香対代田

「よし、じゃあ一本やってみよう」


緑箋はやるが殺るに聞こえて仕方がなかったが、

それは突っ込まないことにした。


「わかりました。お手合わせ願います」


代田がゆっくりと立ち上がる。

緑箋はお札を回収する。

お札は何度でも使うことができるが、

その度に呪文はかけ直さないといけない。

やっぱり普通に呪文をかけた方が早いなと、

緑箋はこの札のいい使い道がないものかと考えているものの、

なかなかその使い道が思い浮かばなかった。

代田は少し札がなくなり少し大きくなり、

また戦闘態勢になるために巨大化した。

とはいえ3メートルほどである。


「そんなものでいいのか?」


「大きくなりすぎても戦いにくいでしょう?」


「ちゃんとわかっているならいい」


「以前それでやられましたからね」


ははははと遼香は高らかに笑った。


「よしじゃあやろうか」


やっぱり緑箋には殺ろうかとしか聞こえない。

二人は軽く構えながら距離をとっている。

すると代田が拳を繰り出す。


「岩石弾!」


その拳から岩が遼香を目掛けて飛んでいく。

両手から出た二発の岩を遼香は普通に避けてかわす。


すると代田は両手を頭の上で組んだあと、

勢いをつけて地面を叩きつける。


「地裂震動!」


地面が割れ遼香へと襲いかかる。


「これは厄介だね」


遼香はそう言って空中へ飛び上がる。

それを代打は見逃さない。


「岩石巨弾!」


先ほどよりも大きな、

遼香と同じくらいの大きさの岩が飛んでいく。

遼香はその岩の上を掴むと、

自分を支点にくるっと回転して、

その勢いのまま代田に岩を返していく。


「なかなかやりますな!」


代田はその岩を両手でしっかりと受け止めると、

投げ返そうとするが、

遼香の姿が見つからない。

遼香は岩の後ろに隠れて同時に前に進んでおり、

代田の後ろに回っていた。

代田の膝の後ろを蹴り飛ばすと、

代田は上体が崩れて倒れそうになる。

しかし代田はそのまま前周りに回転しながら受け身をとって体制を立て直す。

そしてくるっと遼香の方へ向き直る。


「土竜召喚!」


地面に手を置いて呪文を唱えると、

地面を這うように盛り上がった岩が遼香を襲う。

遼香が避ける方向へ土竜も方向を変えるため、

単に避けることができない。


「なかなかやるね」


遼香はそう言いながら、

地面に拳を叩きつけると、土竜を消滅させる。


「岩列弾!」


代田はそのまま遼香の頭ほどの岩を放ち続け、

土竜も召喚した。

距離をとって懐に入れずに攻撃を仕掛け続ける作戦である。


遼香は代田の飛ばしてきた岩を地面に叩き落とし、

土竜を相殺する。

さらに岩に拳を当て、

破壊した破片にさらに拳を当て、

岩を粉々に破壊していく。

土煙の中遼香の姿が見えなくなる。

その土煙の中から代田に向かって飛んでくる遼香の姿が見えた。


「まずい!」


代田はその瞬間自分の目の前に土壁を展開した。

しかし遼香はその土壁の上を破壊し、

代田の襟元を掴むと、

そのまま土壁の上を目掛けて一本背負いのようにして投げつける。

代田の体が土壁に上に叩きつけられると思った瞬間、

遼香の手元が滑り、

代田は土壁を越えて投げられてしまった。


「参りました!」


まだ戦えるんじゃないかと緑箋は思ったが、

投げられた代田は降参した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る