第340話 訓練室の使い方

食事も終わり、今日はここまでと解散することにした。


緑箋がいつもの訓練をすると言うことで、

訓練室の使い方を教えることも兼ねて、代打と一緒に訓練室へ移動する。

たえにも一応使い方を覚えてもらおうと、

片付けは後でみんなで手伝うことにして、

たえも一緒に訓練室へ。

そして訓練室の中へ入ったら、

遼香と朱莉も入ってきた。


「まあそうなりますよね」


緑箋は後ろから隠れる気もないのにゆっくりと音を立てないように近づいてくる、

遼香と朱莉にいつ突っ込むべきか迷っていたのだ。


「いつでも一緒に訓練していいって言っただろう?」


遼香の言う通りであるし、

緑箋にとっては願ったり叶ったりな状況なのだが、

ほぼほぼ毎日訓練をしていると、

遼香の仕事が心配になってくるのも事実だった。

どうやら訓練した後に遼香は事務作業を行っている様子であったからだ。

でもまあ緑箋がそんなことを心配しても仕方がない。

まず一人前になって遼香の仕事を減らすように努力するしかないのだ。

遼香の仕事の手伝いは朱莉がとても上手くやってくれている。

まあそんな朱莉も一緒に訓練しているので、

朱莉の仕事も心配になっているのだが、

遼香も朱莉もそんなに仕事をためておくような人ではないので、

効率的に物事は進めているはずである。

それでも時と場合により臨時に色々なことに対処しなくてはならないのだから、

時間があるうちにしっかり休めばいいのにと思わなくもないが、

その時間を有効活用して自分の身を鍛えておくこともまた重要であるのだろう。


訓練室は言ってみれば異空間である。

ある程度の自由が効くので、

もし代田法師が制御が効かなくなった場合でも、

ここの中に入ることで外の被害がなくなる。

緊急避難先としても役立つはずだ。

今時は色々な街にもこの施設があるので、

珍しくもないが、

自分で直接動かすと言うのはなかなかないのかも知れない。


代田もたえも興味深そうに話を聞きながら、

試して動かしている。


「代田は鍛えたりしているのか?」


「農作業や軽い運動などはやりますが、

体を鍛えるとか戦うと言うことはもうあまりありませんね。

それこそ遼香さんと組み手をした時以来ではないでしょうか」


「それもそうだな。

別に戦う意味もなければ、

鍛える必要もない。

だがここに来たからには少しは戦えるようになってもらわないと困る」


「それはわかっております。

私もそれなりに戦力になるように頑張ります」


「それなりではダメだな。

前線で戦えるようになってもらわないと。

それくらいの気持ちを持ってこそ一人前になれると言うものだろう」


この話は緑箋にも響いた。

自分が一番強いとは思ったことはないし、

誰に勝ちたいとも思わないが、

誰かが傷つくのは嫌だから、

そのためには自分の力を鍛えなければならない、

その想いだけは人一倍強く思っている。

こんなことを思えるようになったのは、緑箋の成長であり、

緑箋の周りにいかに素晴らしい人たちがいてくれたのかという証拠でもあった。

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