第336話 新居

一行は総本部まで戻り、総本部には入らずにそのまま裏手へ進んでいく。

軍の施設以外にもいくつかの建物が並んでいるようで、

未だにここがどこなのか緑箋にはよく分かっていない。

ただ総本部から10分とかからないところに、

巨大な平屋が建っていた。


「ここがダイダラボッチとたえさんと緑箋君の新しい家になる」


遼香が手を伸ばしてどうだと言わんばかりに紹介した。

簡単に説明すると、

真ん中に正方形に仕切られた四部屋、

中には廊下が巡っていて、

その外側に、四部屋ずつ並んでいる。

合計で12部屋あるということになる。

部屋にはそれぞれ外からも入れる扉があり、

建物の中に入れる扉も四方についている。

ある意味寮のような建物である。


真ん中の四つの部屋は、

訓練室、食堂、お風呂、休憩室や会議室となっていた。


「じゃあダイダラボッチたちは部屋はどこにするかね?

今なら選び放題だ」


「そうですね……」


ダイダラボッチはそう言ってたえと相談して、

東の北側の二部屋を選んだ。


「じゃあ緑箋君はどうする?」


緑箋はダイダラボッチと近いほうがいいと考えて、

南東側の角部屋を選んだ。


「よーしじゃあこれで決まりだな。

ではダイダラボッチたちは一旦部屋に入って、

ものを置いてきてもらおうか。

私たちは訓練室に入っておくから、

終わったら来てくれ」


そう言って二手に分かれた。

新築の匂いがするなと緑箋は思った。

龗はよく寝ている。

コロコロ住むところが変わることになるが、

龗はあまり気にしないようなので、

緑箋は安心している。


「龗はほんとにおとなしいね」


朱莉は龗の頭を撫でながら話す。

龗は気持ちよさそうに頭を上げる。


「細かい性格じゃなくてよかったです」


「人間の細かいことなんて気にしていたら、

神様なんてやってられないもんね」


神様かどうかはわからないが、

龗が安心しているならそれが一番だと緑箋は思っている。

緑箋と遼香と朱莉の3人は訓練室に入った。


「じゃあちょっと準備しますね。

準備っていっても札に呪文を込めるだけなんですけど」


緑箋は龍人に作ってもらった札を取り出すと、

札に呪文を込めた。


「それで終わり?

その札っていつまで使えるの?」


朱莉が疑問を口にする。


「ええっとですね。

私の手の中にあるうちは使用できます。

札から手が離れる、

例えば札を落としてしまったりしても、

数分だったら効果は続くようです。

今の所最大1分間程度ならば効果はありました。

なので1分以内の距離ならば、

飛ばして使うことも可能です。

その場合は普通にスキルを使ったほうがいい気もするので、

使い所はあまりないかもしれないです」


「結構使い道が難しいんだね」


「そうなんですよね」


そんなことを話していたら、ダイダラボッチとたえもやってきた。

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