第335話 ダイダラボッチの引越し

「わかりました、遼香さん。

でもそれでもやっぱり話して欲しかったなって思います。

命令じゃなくてもきっと僕は素直に遼香さんの考えを受け入れましたよ」


「わかった、緑箋君。

次からしっかり話をさせてもらうよ。

私が年上で階級も上だからなかなか難しいとは思うが、

緑箋君も自分が思ったことはなんでも言ってくれ。

これはお互いの約束にしよう」


「わかりました。これからもよろしくお願いします」


いい感じで遼香と緑箋の会話がまとまったが、

ダイダラボッチの話はまだ終わってはいなかった。

しかしダイダラボッチは二人の会話を眩しそうに聞いていた。


「さて、置いてきぼりですまない。

ダイダラボッチが施設で生活することになったので、

便宜上ダイダラボッチは遼香隊の一員に加わってもらうことにする。

それでもかまわないかな?」


「それはこちらとしてもお願いしたいです」


「そうか、ありがとう。

遼香隊に入ると言っても、入隊するという形ではなく、

あくまでも客人扱いという形にしようと思うんだが……」


そういう遼香に被せるようにダイダラボッチは口を挟む。


「それはダメです。遼香さん。

私も遼香隊の一員として扱ってください。

ただ飯を食らうだけではいけません」


「そうか、ならばちょうどいい。

緑箋君もこの春からの新人だから、

二人で組んでもらって一緒に学んでいってもらうことにしようと思うが、

どうだね二人とも?」


緑箋はダイダラボッチを目を合わせる。


「遼香さん……」


緑箋はそこまでいって遼香の言葉を待った。


「わかったわかったって。

今約束したばかりだものな。

私は初めからダイダラボッチを遼香隊に加入させて、

緑箋君と組んでもらおうを思っていたんだ」


遼香はばつが悪そうな顔をしている。


「まあそうでしょうね。

遼香さん大丈夫ですよ。

遼香さんがしっかり考えているってことは知ってますから。

野生の感かもしれませんけど、

遼香さんの考えは当たりますからね。

今は先輩の意見を素直に頂戴いたします」


緑箋は笑った。

ダイダラボッチも笑った。

朱莉も笑った。

遼香はぎこちない笑みをたたえていた。


「一応仮手続きの方が済みましたので、

これから一緒に軍に戻ることにしましょう」


朱莉はテキパキとことを進めていた。

生活がしやすいように物を準備しなければならないので、

遼香と朱莉と緑箋も物を詰めるのを手伝った。

ダイダラボッチとたえの指示のもと、

使いやすいものを運ぶことになった。

元々あまり物が多い生活をしていたわけでもなかったようなので、

一時間余りで準備も終わった。


「たえさんもこれで大丈夫でしょうか?」


「はい、ありがとうございます大丈夫です」


来た時は3人だったが、

帰りは5人になって一向は軍へ戻ることになった。

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