第334話 ダイダラボッチの決意

「どうしたんですか?」


突然大きな声を出したダイダラボッチに、朱莉は驚いて聞いた。


「決めたんです。

緑箋さんのスキルで私が小さくなるということが確認できましたので、

私は緑箋さんとともに生活していきます」


ダイダラボッチは覚悟を決めた顔をしているが、

緑箋にはまだその覚悟はない。

そもそもともに生活するというのがどういうことなのかもわからないのだ。


「それは緑箋君の近くで生活する、

つまり軍の施設に来てもらえるということかな?」


遼香はあくまでも冷静に問いかける。


「そうです。

緑箋さんと一緒に生活する方が安全だということです」


確かにそれはダイダラボッチのいう通りではあるのだが、

ダイダラボッチは緑箋と一緒に生活することをすでに決めてしまっているようだ。


「わかった。

ダイダラボッチの覚悟もわかったので、

あとはこちらで準備することにしよう」


「ちょ、ちょっと待ってください遼香さん。

一体どうするつもりなんですか?

一緒に生活するって、本気ですか?」


「もちろん緑箋君にも自分の生活があるだろう。

いきなり一緒に住むというのは難しいのはわかっている。

それにダイダラボッチの生活あるし、

女中さんの生活もあるだろう。

そのあたりは今後詰めていかないといけないな」


あくまでも緑箋もともに生活するような流れである。


「いや、私の方はもういますぐで結構です。

できればあの、たえの方も一緒にお願いできればと思っています」


あの女中さんがたえさんなのだろう。


「ではちょうど空いている住宅があるから、

そこに住んでもらうとしようか。

平家が四棟並んでいるような建物で、

そこの中には訓練室と同じような仕組みの部屋もついているから、

もし巨人化が避けられないようだったら、

訓練室で生活してもらうことも可能だ。

そこならばある程度安定した大きさを保てるはずだからな」


「ああ、あの新しい建物、ここで使うわけですね。

なんで遼香さんあの建物申請したのかって思ってたんですよね」


朱莉の呟きに遼香は指でバッテンを作った。

緑箋はピンときた。


「遼香さん、その新築の建物、いつできたんですか?」


「いや、つい先日だが……」


「それに僕も住むことになりますよね?」


「いや……緑箋君が望めばっていうことだが……」


「そうなることわかってましたよね?」


「いや、わかっていたというか、たまたまというか、

奇跡というか、必然というか……」


珍しく遼香が慌てている。

緑箋は大きくため息をついた。


「遼香さん、初めから素直に言ってくださればいいのに。

初めっからこの計画だったんでしょう?」


「いや……まあ……その……、

これを言ってしまったら命令みたいになってしまうじゃないか」


「命令していいんですよ、僕は遼香さんの部下なんですから」


「いや、それは違うよ緑箋君。

責任者は私だが、遼香隊の隊員は部下ではない。

同志だ。

そこは間違えないでもらいたい。

もちろん緑箋君も新人だが、部下ではないぞ」


遼香はそこは真剣に緑箋の目を見つめて話してくれた。

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