第310話 スキルの再確認

緑箋にもまだよくわかっていないことは多いが、

自分のスキルについて説明した。


「薬師というので薬の効能がわかるとか、

薬の効果が上がるとか、

そういうものかと思ったんですが、

むしろその辺りの能力は全くなくて、

薬の知識というのは、

学校の部活、薬学研究部で学んだ程度です。

まあものすごく詳しい人たちがいたので、

それはそれでめちゃくちゃ面白かったんですけどね」


「そうなんですね。

命名師というスキルは僕も聞いたことがないんですが、

自分で名前をつけると効果が現れるという感じなんですよね」


「そうです。

でもそこは薬という関係になっているようで、

名前をつければなんでもできるというわけでもないようです。

あとすでにある薬の名前を利用することはできませんし、

あまりにも強力すぎる効果も使えませんね。

これはスキルによるものなのか、

僕の想像力のなさからくるものなのかもよくわかりません。

ただ一度名前と効果が決まったものについては、

いつでも使用可能です」


「できなかったスキルはどんなものがありましたか?」


「単純に言えば攻撃魔法ですね。

火を吐くとか雷を落とすとか、

やりようによってはできるのかもしれませんが、

だったら普通に魔法を使ったほうが早いので、

あまり試していません。

回復系もスキルとしては使えますが、

即全回復は無理で、徐々に回復する感じです。

毒に関しても致死性の高い毒は今のところは無理でしたね。

幻術幻覚効果は使えないことはないですが、

これは相手の効き目がどの程度かわからないので、

使い勝手は悪いかもしれません。

弱体効果は結構使えるものが多いですが、

属性耐性弱体化みたいなものはそれなりに効果は出ますが、

即寝るとか即気絶するというようなことは無理っぽいです。

あと空は飛べません」


最後の空中浮遊魔法も薬として考えられそうなものではあるが、

緑箋の資質からできないのであろう。


「なるほど。便利なようで便利じゃないようでという感じだね。

流石に万能すぎるのも困りものなのかもしれないなあ」


「でもこれでも十分強力すぎるスキルだと僕は思ってるんですが、

結構評判は悪いですね。

だったら魔法を使えばいいとか、

薬の飲んだらいいとか、

大体他のもので使えることが多いですから、

確かにそれはそうだなって思ってます」


「命名師って聞いたら、

単純に名前をつけるだけって思ってしまうかもしれませんね。

でも強力だと思われているスキルも、

結局は使う人次第で、強くも弱くもなりますし、

絶対に使えないと思うようなスキルでも

創意工夫で使えるようになるのがこの世界ですし、

有名じゃないスキルの方が怖かったり効果的だったりすることは多いんです。

緑箋君の場合はすでに高い効果を出していると思うので、

油断させるくらいがちょうどいいかもしれませんね」


「そうだと思います。

結構面白いスキルだと思ってて、

まだまだわからないことが多いので、

調べて自分で育てていく感じは面白いかなって思ってます」


「自分のスキルについて興味を持って、

探究し続けていくっていうのはとても大切だと思います。

これは自分にも生きるし、

おそらく周りにも生きていくことだと思います。

素敵なスキルの話を聞かせていただいてありがとうございました」


そう言いながら幽玄斎の髭が動いた。

口角が上がったように緑箋には見えた。

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