第309話 ようやく訓練

緑箋と幽玄斎は訓練室に入って、

実際に訓練を行なっていくことになった。


「じゃあ緑箋君。改めまして、よろしくお願いします。

龗君もよろしく。寝てるのかな?」


「よろしくお願いします。龗は好きなようにしてるのでお気になさらずに」


「その辺りの話も聞いているので大丈夫です。

いやでも本当にすごいですよね。

龍をこんなに近くで見られるなんて、嬉しいですよ」


意外と幽玄斎も好奇心が旺盛のようだ。


「さて、我々隊員が一番毎日やらないといけないのはもちろん基礎訓練になります。

一応すでに緑箋君の能力の記録はここにありますし、

話も聞いています。

はっきり言って基礎訓練はもういらないんじゃないかと思うくらいで、

個人の魔法の実力に関していえば、

僕よりも上だと思います。

これはお世辞でもなんでもなくてです。

ただ、軍として戦う上においてやっぱり決まりごとというのがたくさんあって、

そういう基本的なものをしっかり覚えてもらえればと思います。

あんまり面白くないことも多いし、

理不尽だなって思うこともあると思うんですが、

そこはご理解いただいて、勉強してもえたらなと思います」


「はい、大丈夫です。

ありがとうございます。よろしくお願いします」


基本的な訓練場となっており、

壁や穴、建物などのが並んでいて、

そこを一緒に走って回っていく。


「実際問題、こういった場所は魔法を使って移動するのですが、

魔法を使った肉体強化をしながら、

こういう道を進んでいくというのは結構大変なこともあって、

怪我はしなくても、

飛び出したりとかぶつかったりとか、

自分の考えと強化された動きというのを、

しっかり一致させるっということが重要です。

ですのでこういう基本的な動作を確認しておくということになります。

自分以外から受ける補助魔法というのもたくさん受けておくといいと思います。

結構ばらつきがあるんですよね」


走って移動しながらそんな確認をしていく。


「話には聞いていましたが、やっぱり飲み込みが早いですね。

意外と突っかかったりするんですけども、すんなり進んでます。

ただ緑戦君は他人に強化魔法や回復魔法は使えないんですよね」


「そうなんです。すみません」


「でもスキルで補えたりもすると聞いてますが」


「はい、できるものもあります。

まだ練習中のものも多いですが」


「一つ僕にスキルを使ってもらうことは可能でしょうか?」


「あ、もちろん大丈夫です。

じゃあ一つかけさせてもらいます。

おとおふ」


緑箋がそう唱えると、

幽玄斎から音が消えた。

自分から発する音が何もなくなるので、

敵に見つからないように移動することが可能になる。

ただ話もできなくなってしまう。

幽玄斎はおとおふの状態に感動しているようだが、

何を言ってるのかは伝わらない。

緑箋は披露するスキルを間違えたなと反省した。

なぜなら先生役の話を聞けなくなってしまったからだ。

話ができなくなってしまって困ったと思ったら、

幽玄斎は端末で連絡してきた。


「いやこれすごくないですか?

話ができないのは不便ですが、

潜入捜査にもってこいですよ」


「すみません、声も出せなくなってしまいましたね。

今解除します」


緑箋はおとおふを解除した。


「いやーすごい!」


大音量でいきなり幽玄斎が喋り出したので緑箋はびっくりした。

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