第306話 衝撃の一夜が明けて

衝撃の一日が明けて、

緑箋はまた遼香の執務室へ出勤した。

すでに朱莉は出勤して、出迎えてくれていた。


「おはようございます。朱莉さん。


「おはよう、緑箋君。

昨日はごめんね。


朱莉は昨日のことを覚えているのか思い出したのかわからないが、

とてもすまなそうにしていた。


「何も謝ることなんかありませんでしたよ。

本当にすごかったんですから」


猫高橋歌謡祭の盛り上がりを思い出すと、

緑箋は胸が熱くなり、あの感動をまた思い出してしまうほどだった。

緑箋が昨日の歌謡祭の盛り上がりを思い出して絶賛しようとすると、

朱莉はそれは言わないでと話を止めた。


「もう私、人前でお酒飲まないから。

これは緑箋君との約束」


緑箋は多分無理ですという言葉を飲み込んで、

曖昧な顔をして返事をした。


「そんなに落ち込まずに、

いい結果を出したんですから、

胸を張っていきましょう」


「結果を出したのは緑箋君と遼香さんだから、

私は……」


昨日の惨状をまた思い出して朱莉は頭を抱えた。

堂々巡りである。

そんな中、遼香も出勤して、こちらの部屋に顔を出した。


「やあおはよう。

朱莉昨日は……」


そう言いかけた遼香の口を塞がんばかりの勢いで飛び出す。


「遼香さん、おはようございます。

その話は緑箋君ともうしましたから、もうやめましょう」


「そうか?

私は全然話し足りないんだが?」


朱莉は物理的に遼香の口を遮断した。


「わかったわかった。

もうこれくらいにしておくから。

さあ、今日から本格的に緑箋君と仕事を行っていきたいと思う。

本来は基礎訓練からになるんだが、

昨日から大活躍してもらって本当にありがたい」


「いえ、こちらこそありがとうございました。

少しでもお力になれたならよかったです」


「少しどころじゃなかったから」


朱莉がそういうとすかさず遼香も昨日のことを話そうとするので、

朱莉はそれを止めさせた。

堂々巡りである。


「ははは、ごめんごめん。

じゃあまあ今日から本格的に緑箋君に覚えてもらうことがあるから、

それをやってもらおうと思う。

朱莉にやってもらおうと思っていたんだが、

昨日の魔界のことで朱莉にもやってもらわないといけないことができたので、

ちょっと別のものを呼んだから、

一緒に基礎的なことを覚えてもらいたいと思っている」


「ごめんね緑箋君」


「いえ、大丈夫です。

ありがとうございます」


「ということで紹介しよう。

入って」


そう遼香がいうと部屋に大きな埃の塊が入ってきた。

もちろんそれは見間違いで、

灰色の着物を着た、灰色のザンバラ髪で、

顔中毛むくじゃらの髭面の男が音もなく部屋に入ってきた。


「今日から緑箋君の教育係を臨時で務めてもらうことになる。

まあ基本的には朱莉が緑箋君と行動を共にして、

もちろん私とも一緒に仕事をすることになるんだが、

ちょっと今のところは彼に面倒を見てもらうことになる」


「わかりました。

初めまして薬鈴木緑箋と申します。

これからよろしくお願いします」


緑箋は立ち上がってしっかりとお辞儀をした。


「ご丁寧にご挨拶誠にかたじけない。

今日から緑箋殿の教育係となりました」


嵐伊藤幽玄斎あらしいとう ゆうげんさいと申しますと挨拶した。

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