第304話 猫高橋歌謡祭

楽しそうに歌い踊る猫高橋歌謡祭も、そろそろ終わりに近づいていた。

酔ってから早い段階で猫高橋歌謡祭は始まっていたが、

歌謡祭の合間にもお酒を飲んで盛り上がっていたので、

酔いが覚めるということはなかった。

しかし酔いが深まるということもなかったので、

以前よりは安定した酔い方で、

むしろとてもいい歌謡祭になってみんなが喜ぶ歌謡祭になっていた。


こういう種族を超えた時に音楽というのはとても偉大で、

あっという間に心の垣根を越える力を持っている。

人間のように歌うだけではなく、

種族が違うので色々な声を出したりすることもできたり、

もっと言えば自分自身が楽器のように音を鳴らせたりもするので、

より歌謡祭は盛り上がっていった。

音楽を中心にみんなが集まり、

心も一つになっていく、とても素晴らしい光景であった。


そしてその中心には朱莉がいた。

遼香や緑箋に比べると、

魔法の能力的には少し低いというところが正直なところではあるが、

この朱莉の持つ魅力、

というかもうむしろスキルと言ってもいいような力は、

この世界でまた特別な輝きを見せることになる。

しかし、それはまた別のお話である。


「そろそろいいお時間になってまいりました。

猫高橋様、次が最後の曲となります」


そう言われて朱莉が駄々を捏ね始めるかと思ったが、

朱莉はしっかりと前を見据えて話し始めた。


「ここまで、みんな盛り上がってくれてありがとー!

たくさんのみんなと一緒に歌えて、とっても幸せでした。

猫高橋朱莉歌謡祭、最後の曲になります!」


ええーという残念そうな声が上がる。


「私もとっても寂しいけど、

最後はみんなで一緒に盛り上がっていきたいと思います。

最後の曲は私が作詞作曲しました。

皆さんの端末に歌詞はもう届いています」


いつの間に送ったのか、一体どうやって全員に送ったのかはわからないが、

猫高橋歌謡祭の会場内の全ての端末に歌詞を送っていたようだった。


「今日のようなみんなの笑顔が永遠に続くことを願って作りました。

それでは聞いてください。

魔法のキラメキ」


キラキラ夜空に お星さまがピカピカ

君と私の心を ひとつに結んで

魔法の力で 勇気をもらうよ

未来の光が 輝きだすの


平和のキラキラ みんなで歌おうよ

魔法の世界で 笑顔をピカピカ

幸せもフワッと 広がるよ

君と私の夢 キラメキでいっぱい


そよ風ふわふわ 緑の草原

妖精たちの声 ふんわり響くよ

どんな困難も 手をつないで

魔法の絆で 強くなるんだ


平和のキラキラ みんなで歌おうよ

魔法の世界で 笑顔をピカピカ

幸せもフワッと 広がるよ

君と私の夢 キラメキでいっぱい


星降る夜に お祈りしよう

君と私の心 ずっとひとつ

魔法の奇跡が きっと起きる

平和の光が 世界を包む


平和のキラキラ みんなで歌おうよ

魔法の世界で 笑顔をピカピカ

幸せもフワッと 広がるよ

君と私の夢 キラメキでいっぱい


平和の願いが 届くように

君と私の未来 輝くために

魔法の力で この歌を歌う

君と私の夢 永遠に守る


いつ打ち合わせしたのか全くわからないが、

朱莉の自分で作った曲の演奏が行われ、

光が会場を照らし、

猫高橋歌謡祭の会場の心は一つになった。

中には涙しているものもいるようだった。


こうして無事に猫高橋歌謡祭は幕を閉じるのだった。

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