第299話 勝負の後

勝負が終わり、関係者コロッセオから移動した。

どこに連れて行かれるのかと思ったら、

コロッセオの近くが広場のようになっており、

なんとそこに大勢の魔界の住民たちが集まっていた。


広場の真ん中には席が用意されており、

席にはすでに豪華な料理が用意されていた。

周りには大鍋や大皿に料理がふんだんに用意されていて、

住人たちも自由にそれを持っていけるようになっていた。


遼香と朱莉と緑箋の三人も席に着くように促された。

そこに魔王たちの関係者も集まって、

魔王二人が上座に誘導されると、

魔王たちは声を揃えていった。


「ちょっと待ちなさい。

我々の席はここではないでしょう?

今日ここに座るべきは、魔法軍の皆さんですよ」


「今回は我々は敗者である。

魔王軍のお三方にこそ座ってもらうべきだ」


そう言って魔王たちは直々に三人のところへやってきて、

三人を上座に誘う。

遼香も最初は固辞していたが、

このままでは埒が開かないと思ったのか、

朱莉と緑箋に目配せをした後、

渋々と上座へ移動した。

とはいえ、魔王たちを別の席に座らせるわけにもいかないので、

魔王二人と三人が上座に並んで座るということで形は落ち着いた。


「すでに住人の皆さんにも報告があったと思いますが、改めて。

今回の勝負の結果、双方引き分けになりました。

今後二人はお互いに魔界のために行動することを第一に考え、

敵対状態を終結することをここに宣言いたします」


会場は大きな歓声と拍手に包まれた。


「その記念として今日は大宴会を行います!」


会場はさらに熱気を増している。


「それでは魔王様、ご発声を」


「まあみなさんもう待ちきれないと思いますので、

堅苦しい挨拶は抜きにしましょう」


「さあ、飲み物を持て!」


そして二人合わせて大声で叫んだ。


「魔界の未来に!」


「乾杯!」


会場中で乾杯の声がこだまする。

緑箋自体は今は子供ではあるが、

別に禁止されているわけではないので飲めないこともないのだが、

この世界に来てもお酒は全く飲めなかったので、

濃いお茶を淹れてもらって、

それで乾杯していた。

なんと魔王たちが自らこちらにやってきたので、

三人も立ち上がって乾杯をした。


「いやあ遼香どの、まさか母親を連れてこられるとは思いませんでしたよ」


山ン本が頭をかきながらいう。


「申し訳ないです。でもお母様方も乗り気でしたし、

いつになっても子は親が怖いものですから、

お二人もそうでないかと思いましてね」


「まんまとやられたってわけだな、わはははは!」


豪快に神ン野は笑った


「それにしてもなかなか面白い勝負を考えつきましたね。

我々も大いに楽しめましたよ」


「それはよかったです。

考えたのはそこの薬鈴木緑箋と申すものです」


「それは聞いておったが、

緑箋殿、先ほどの最終試技、あれは誠にすごかったな」


「そうそう、私もあれについてお聞きしたかったんです。

あれは緑箋殿のお力だったのでしょうか?」


「緑箋君、私もそれ聞きたかったの」


急に魔王たちに囲まれて緑箋は本来の力がなくなりそうであったが、

それよりも何よりも朱莉の圧が凄すぎてびっくりしてしまった。

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