第298話 魔王たちの決意

「それでは今一度魔王様、前の方に来ていただいて、

今回の勝負は双方合意の上の引き分けと言う結果になりましたことを、

改めてご確認いただきたいと思います」


「一度決めたこと、男に二言はありません。

我々の起こしたことに関して、

これだけのご迷惑をおかけしたこと、

平にご容赦いただきたい。

そして神ン野殿。

長きに渡って我々が争ってきたこと、

それは決して悪いことばかりでなかった。

正直神ン野殿とこうして様々に争ってきて、

私の力の高めてもらった面も多くありました。

しかし今後はこの魔界、

手に手を取り合ってとはいかなくても、

双方がいい魔界になるよう、

さらに日本の発展に与することができるように、

精一杯努力を惜しまないことをここに誓います」


山ン本はみんなに向かって、

そして神ン野に向かって頭を下げた。


「今、山ン本殿の発言の通り、

我々は長きに当たり争いをおこなってきたが、

今回の勝負の結果を重く受け止め、

我々の争いはここで終結することを宣言する。

詳しい調印などは後で行うが、

これは無条件で行うと約束する。

今回勝負を行うことによって、ようやく気がつかされたが、

我々のくだらない争いによって、

魔界の中での損失があまりにも多くなりすぎるということは、

結果として魔界の損失であり、

そんな結果を喜ぶのは、

我々双方のどちらかではなく、

結局魔族ということになってしまう。

今我々の前にある脅威に気が付かないふりをして、

お互いが争っている場合ではない。

こんな当たり前のことに今ようやく気がついたということを恥じるが、

だからと言ってこのまま先に進んでいたことを考えると、

遅きに失したとしても、今気がつけたことは大いなる前身である。

今後は山ン本殿との協力体制を強めながら、

この魔界の統治に生かしていきたいと思う」


神ン野もみんなに深々とお辞儀をした。

そして二人の魔王はお互いに歩み寄り、

固く握手をした。

長きにわたる争いが終わった歴史的瞬間である。


「やりましたね、遼香さん。

これで懸念が一つなくなりましたよ。

何より、魔界に平和が訪れるなんて、すごい光景ですよ!

これも遼香さんの思惑通りだったんですか?」


猫高橋はものすごく興奮している。

魔界の情勢がよくわかっていない緑箋にはまだそれほど衝撃はなかったが、

やはりものすごい出来事が起きているということはなんとなく伝わってきた。


「まさか、こんなことになるとは思ってなかったよ。

まあ賑やかし程度、

面白い余興程度にはなるかなと……」


「ちょっと、遼香さん!」


「すまんすまん。冗談だよ。

一旦時間稼ぎ程度にはなるかなとは思っていたんだが、

本当に素晴らしい結果になった。

後顧の憂いの一つがなくなるとは思わなかったよ。

よくやったよ緑箋君」


「いやほんとにすごかったよ。

緑箋君、ありがとう」


猫高橋は興奮して緑箋の両手を握手をして喜んでいた。




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