第295話 第三試技の感想

「さて、お母様たちも着席いただきました。

あ、はい、手を振っていただいてありがとうございます」


母親たちは司会に向かって元気よく手を振っている。

もう役目も終えたし、

息子にも会えて機嫌が良いのだろう。


「では今一度魔王様たちも所定の位置に戻っていただきまして、

準備の方進めていきたいと思います。

準備ができる間ですね、第三試技の感想の方聞かせていただければと思います。

では今回は神ン野様から。

第三試技の方のご感想はいかがでしたでしょうか?」


「うーん」


神ン野はなんともいえない表情で天を仰いでいる。


「そうだな、あまりにも意外すぎでかなり驚いたと言うのが本音だ。

恐怖、まあ恐怖、そうだな、恐怖といえば恐怖なのかもしれないな。

こういう手で来るのかという驚きもあったが、

小さい頃のことを思い出してしまった面もあったな。

はっきりいって桜風院殿の作戦勝ちだな。

素直にやられてしまったと評価したい。

それと今回こう言う機会を与えてもらって、

まあ母親と話をすることができたと言うことは、

正直よかったなと思っている」


神ン野は話しながら少しずつ嬉しさも感じていることを伝えてくれた。


「神ン野様、ありがとうございました。

それでは山ン本様、第三試技はいかがだったでしょうか。

ご感想をお聞かせください」


「まあ、神ン野と一緒ではあります。

まさか母親が登場するとは全く思っていなかったので、

してやられたと言う気持ちです。

この歳になっても子は子であり、

母は母ということでしょう。

関係性が変わることはありませんでした。

桜風院殿アッパレという感じでしょう」


山ン本も全く想像していなかったようだった。


「そういう驚き、恐怖もありましたが、

こうやって母上の元気な姿を確認できたこと、

話をすることができたこと、

こういう機会を持てたことに関しても素直に感謝致したいと思います」


二人の母親はますます盛り上がって、

自分の息子を応援しながら手を振り続けている。

あの二人だけは、さながらアイドルのライブ会場のファンのようだった。


「山ン本様もご感想ありがとうございました。

桜風院様がどのような試技を行なっていただけるのかと、

我々も楽しみにしていたんですが、

さすがの試技ということで、

私どももびっくりさせられました。

桜風院様、誠にありがとうございました」


桜風院がお辞儀をして答えると、

母親たちから桜風院に対して感謝の言葉と声援が送られた。


「さて、それでは会場の方の準備も整ったようです。

今回は魔法軍の方から桜風院様のご推薦もありまして、

今回の勝負の企画立案者でもあります、

薬鈴木様の試技を行なっていただきたいと思います。

薬鈴木様、所定の位置へお越しください」


「緑箋君頑張って!」


「落ち着いて、平常心で」


猫高橋と遼香の声援はもうすでに緑箋の耳には届いていなかった。

緑箋は操られたようにすーっと魔王たち二人の前の所定の位置まで歩いて行った。

緑箋の緊張をよそに、

龗はいつものように肩に頭を乗せてくつろいでいた。

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