第292話 中間休憩

「それでは、これで試技も半分終わりとなりましたので、

一旦魔王様たちに今までの感想を聞いてみたいと思います。

では先に山ン本様、今までの試技を受けましていかがでしたでしょうか?」


「正直なところ、どちらもこんなものかという感じでした。

普段我々が驚かそうとしている時にやっていることからは、

少しずらしてきたところは評価してもいいのかなと思いましたが、

まあ、流石に私たちに恐怖を与えるというところまでは、

残念ながら行かなかったかなと思います」


自信満々に山ン本は答えたが、

点数はしっかり山ン本の数値を叩き出している。

自分ではその点数はわからないので、

このような発言になってしまっているようだ。


「驚きというのはありましたか?」


「まあ正直に言えば多少はあったかもしれないです。

それはいきなり後ろから大声で叫ばれたら少し驚くという感じですかな。

我々も恐怖を与えるということについてはよく考えているわけですが、

今回珍しく私自身が体験する機会を得られたので、

今後に活かしていきたいと思っています」


意外と正直に山ン本は話してくれたようだった。

どうやら山ン本も珍しいこの機会を楽しんでいる。

そのあたりは山ン本の余裕と言えるのかもしれない


「山ン本様ありがとうございました。

それでは次に神ン野様にも聞いていきたいと思います。

神ン野様、今までの試技はいかがでしたでしょうか?」


「まあそうだな。こんなものかという気持ちと、

こうくるかという気持ちと複雑だな。

ただどういうものが来るのかという楽しみはあるので、

今の所楽しんで見ておる」


「神ン野様も楽しまれているということで、

いい勝負になっているのではないでしょうか?

今後は魔法軍の方々の試技が始まるわけですが、

意気込みなどはありますでしょうか?」


「人間にどれほどのものができるのか、

といってしまえばおしまいになるが、

ただ一人が桜風院殿ということで、

果たしてどのような試技を行なってくれるのかというのは、

とても興味深い。

今から楽しみである」


恐怖を与えられるというのに楽しみというのが、

本音なのか強がりなのかはわからないが、

楽しんでいるのは確かなようだ。

魔王と言っても魔族とはまた違った魔王ではあるので、

その残忍さや残酷さ、そして魔王の持つ感情というのは異なるのであろうが、

こちらの魔王たちはどことなく憎めない感じがしているので、

話を聞いていると緑箋も少し魔王たちに親近感を覚えるようになってきた。


魔王といえば人と対峙するもの、人間の敵という感じを持つが、

魔族ではないこれらの魔王たちは、

どちらかといえば人間とは違う場所で生きているものなだけであって、

別に敵対するものではないのかもしれない、

そう緑箋は思っていた。


よくよく考えてみると、

緑箋がこれまで出会ってきた人ならざるものたちは、

誰もが魅力的に面白いものたちであった。

時には人よりも人っぽく、

人よりも人情味あふれるものたちであった。


緑箋は人の方が上手く交流を持てない人生だったので、

こうやって人ではないものとの交流ができるのがとても嬉しかった。

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