第291話 第二試技

第一試技からもうヘロヘロの猫高橋をよそに、

勝負は着々と進んでいく。


「それでは次は山ン本陣営代表の試技になります。

すでに準備は整っているようです。

それでは山ン本陣営代表お願いいたします!」


またコロッセオの中の光が遮断される。

緑箋の隣の猫高橋がひっと小さく悲鳴をあげた。

そしてゆっくりと会場が明るくなっていく。

今度は二人の魔王の目の前に巨大な鬼が立っていた。

そしてその鬼の横には酒樽と、大量の酒瓶が置かれていた。

それをみた魔王たちは席から立ち上がった。

鬼は酒樽を逆さにして、酒をうまそうに飲み始めた。

それをみて山ン本はどかっとまた席に座った。

あっという間に酒樽は空になったのか、

鬼は酒樽を振って最後まで飲み干そうとする。

完全に飲み終わった酒樽をおくと、

今度は酒瓶を無造作に持って、

次々と酒を飲み干していく。

まだ立っていた神ン野も山ン本と同じように、

ぐったりと席に座り込んだ。

鬼はうまそうに酒を全て飲み干すと、

酒樽に瓶を入れて退場して行った。


ぐったりと席に座っている二人の魔王が取り残されていた。


「ということで山ン本陣営代表の試技も終わりました。

準備出来次第、得点結果の発表となります」


少し間が空いたが、

その間も魔王の二人はガックリと腰を落としていた。


「さあ、準備ができました。

得点を発表します」


山ン本、二十三点、

神ン野、六十九点、

という結果になった。

数的に言えば恐らく神ン野の好きなお酒の方が多かったようなのと、

それぞれの瓶の価値が高かったように思われるので、

その衝撃が高かったのかもしれない。


「今は魔王様たちの音声を遮断している状態ですので、

今の試技について解説いたしますが、

今、鬼が飲んだ酒はそれぞれの魔王様が秘蔵していたお酒を持ってきまして、

鬼に飲ませたということになっています。

それぞれすでにこの世界には存在し得ないような貴重なお酒でありまして、

魔王様たちがとても楽しみにしていたお酒でございます。

ということでお二人はとても衝撃を受けているような次第でございます。

しかし、実を言いますと、あのお酒は全て偽物でございます。

持ち出してしまって、さらに飲み干してしまったあと、

どんなふうになるのかわかりませんので、

本物は本物で大切に保管されたままになっております。

このことは後で二人の魔王様にもしっかりご説明させていただきますので、

ご安心ください。

誰が説明するかということについて、

今お答えすることは控えさせていただきます」


得点も消えて、二人の魔王もなんとか気を取り戻してきたようだった。


「山ン本陣営代表の試技は以上になります。

なかなかいいところから攻められていたんではないかと思います」


「こんな勝負だったらみてて楽しいのにね」


猫高橋は先ほどよりは少し気分を持ち直していた。


「そう言っていられるのも今のうちじゃないか?」


「ちょっと、遼香さん、驚かすのはやめてくださいよ。

私じゃなくて向こうにやるんですからね」


猫高橋の抗議に対して遼香はニヤリと笑って答えた。



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