第289話 勝負の諸注意

勝負の開始時間が迫ってきた。

緑箋は相変わらず落ち着かない様子ではあったが、

三人にもお呼びがかかってしまった。

緑箋は周りの声が聞こえているのかいないのかわからない状態だったが、

猫高橋に支えられるようにしてコロッセオの中へ入っていった。

コロッセオの正面には二人の魔王が座る透明の球体に囲まれた席が用意されており、

二人の間には壁があってそれぞれ見えないようになっている。

つまり二人の魔王はお互いの状況、

行動や声などもわからないようになっているらしい。


緑箋たち三人は魔王の向かいの席に座って待つように指示された。

そのほかに座っているものはおらず、

魔王の席の後ろには恐怖測定装置の得点が発表される掲示板が表示されていた。


時間前になり、東西の扉からそれぞれ魔王が登場し、

あらかじめ決められた席に座った。

そこから細かい確認作業を行われて、

準備が整ったようだった。

老爺が話を始める


「今回は山ン本、神ン野、それぞれの陣営で共同して、

勝負の準備を行ってまいりました。

このことは魔王様たちも確認済みでございます。

今回は私の方が司会を務めさせていただきます。

司会という立場ですので、

完全に中立の立場で行っていきますことをここにお約束させていただきます。

ではまず今回の勝負の最後の説明をさせていただいて、

勝負に移りたいと思います」


全員が頷く。


「ありがとうございます。

まず今魔王様が座られている球体ですが、

魔法防御結界になっておりますので、

不慮の攻撃などがありましても耐えられるものになっております。

また現在は内と外の声は聞こえるようになっておりますが、

試技が開始する前に中の声が漏れないようになりますが、

外からの声は聞こえるようになっております。

もし声を遮断した後で不都合がありましたら、

挙手していただければ対処いたします」


魔王たちが頷く。


「そして先ほど順番を決めました通り、

神ン野陣営代表 、山ン本陣営代表 、桜風院様、薬鈴木様の順番で、

試技を行ってまいります。

得点に関しましてはその都度、

不正の内容に後ろの掲示板に表示いたします。

この得点は双方の陣営、そして魔法軍の皆様にもご確認いただく形になります。

ただ魔王様ご自身は見えないようになっておりますので、

最終結果までお待ちください。

また今回の結果につきましては、

全て従うものということは、

二人の魔王様もご理解いただけているということでよろしいでしょうか?」


「もちろんです」


「二言はない」


二人の魔王はそう言い切った。


「ありがとうございます。

ではその他何かご質問はございますでしょうか?」


澱みなく説明が進んでいく。

ということは澱みなく緑箋まで順番が回ってきてしまうということでもある。

緑箋はあまりにも早いこの時の流れに、

どうやったら抗えるのかと考えていたが、

結局抗う術は見つからなかった。


「質問はありません。

早く勝負を始めましょう。

私はさっきから楽しみで仕方がないのですよ」


山ン本は何やら楽しそうにしている。


「私も同じだ。

さっさと始めてくれ」


神ン野も待ちきれないと言った面持ちである。

どうやらこの中ですでに恐怖を感じているのは、

緑箋だけなようであった。


「それでは時間になりましたので勝負を始めさせていただきます!」

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