第286話 開始前の打ち合わせ

三人がそんな話をしていると、

扉の外からお待たせしておりますと声がかかり、

扉がゆっくりと開く。

西側の扉から山ン本五郎左衛門が黒の羽織袴で登場する。

そして東側の扉から神ン野悪五郎が真っ赤なマントを羽織って登場した。

正方形の机に魔王同士は向かい合って座った。

猫高橋が静かに立ち上がる。


「ではみなさんお揃いのようですので、

ここからは私、猫高橋が進行させていただきます」


そして一応見知った顔にではあるが、

順番に今回の関係者を紹介していく。

勢揃いするのは初めてである。


「まず、私どもの贈り物が今回の創造の一端となってしまったこと、

お詫び致したいと思います。

そして、今回桜風院の提案の勝負を受け入れてくださいまして、

感謝いたします。

このような形にはなりましたが、

お二人の魔王様たちにも受け入れていただきましたので、

この勝敗に関して意義は唱えられないようお願いいたします」


「無論二言はない」


「承知しております」


二人の魔王もしっかりと今回の勝負を受け入れている。


「ではここで勝負の方法について確認させていただきたいと思います。

すでにお連絡している通りですが、

今回の勝負は恐怖対決となります。

どれだけ恐怖を感じられるのかという勝負になります。

山ン本様、神ン野様の代表一名ずつ、

さらに我々から桜風院と薬鈴木が代表になりまして、

お二人に恐怖を与えるような行動をとっていきます。

それに対してより恐怖を覚えた方が負けとなります。

すでにお送りした恐怖測定装置によって、

お二人の様子から恐怖度を百点満点で発表していきます。

その得点が多い方が負けとなります。

ここまではよろしいでしょうか?」


山ン本が口を開く。


「測定方法についてはこちらでも試験を行ないました。

まあ確かに不確定要素も高いとは思いますが、

ある程度恐怖度が測れること、

何か作為的なものはないことは確認いたしました。

今回は我々はこの方式で行うことに異論はございません」


神ン野も同様だった。


「今回の勝負につきまして我々は、

完全に中立的な立場を取らせていただいております。

恐怖測定装置につきましても、

測定前に前の数値を消す以外の行動は取りませんので、

ご安心いただければと思います」


二人の魔王も大きく頷いている。


「ちなみにお二人の代表が何を行うかについて、

お二人とも自身の代表から情報を得ていないということでよろしいでしょうか?」


「無論だ」


「もちろん聞いておりません」


「ありがとうございます。

では四人の代表が順番に試技を行っていきますので、

これからその順番を決めたいと思います」


「えっ?」


緑箋は思わず驚きを口に出してしまった。

恐怖を与える行動を取ることは聞いていたが、

その順番を決めるということを忘れていた。

というか自分が一番関係がないので、

一番最初にやると思い込んでいたのだ。

ここで、もし緑箋が一番最後になろうものなら、

ということを考えると、

先ほどまで余裕を見せていたはずの緑箋に、

極度の緊張感が襲い始めた。

これはまずい。

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