第282話 魔王勝負の開催決定

部屋に残った緑箋と猫高橋は早急に資料をまとめ始めた。

お昼前には資料を完成させ、

猫高橋は二人の魔王に連絡を取った。

二人ともこちらの提案に少し驚いたようだったが、

どりたも自分向けの勝負だと思ったことと、

いつもとは違った楽しみもあると思ったのか、

二つ返事でこの勝負を受け入れることになった。

細かい仕様については再度検討ということになった。

二人の魔王ともに準備が必要だし、

その準備については我々も必要なため、

勝負は一週間後となった。

二人の魔王ともこの勝負を楽しみにしているようで、

その結果は全て受け入れるということになった。

正式は契約書のようなものは何もないし、

作ったところで反故にしてしまうことは簡単なのだが、

こういう勝負事に関しての取り扱いはとても真摯なものであり、

その結果を重視していなければ、

やはりこういう世界ではやっていけないということを、

魔王もよくわかっている。

裏切りやどんでん返しのような話はよくあるが、

そんなことをしていては元も子もないというのを、

魔王たちもよくわかっているようだった。


もちろんそれはこちらも同様で、

その勝負について常に真摯に取り組むことで、

不正を行わずに勝負を成立させることが重要である。

どちらかを勝たせたいというような、

邪な考えは御法度である。

そんな考えを遼香が許すはずもないのだが。


勝負の内容と日程が決まったので、

当日へ向けてこちらも準備に取り掛からなくてはならない。

遼香はすでにウキウキしながら何事かを考えているらしく、

いろいろなところへ何かを発注しているようだった。

猫高橋や緑箋にはそのことを全く告げず、

自ら動いて準備を進めている。


「二人にも楽しんでもらいたいからな。

当日までのお楽しみだよ」


遼香はこの勝負が決まってから上機嫌である。

猫高橋にも内緒というのも別に珍しいことではないようで、

猫高橋はまたこれかというような感じて対処していた。

猫高橋も常時やらなければならないこともあるし、

今回の勝負に関しての下準備もしなくてはならないようで、

各機関との調整を行なっている。

緑箋はそんな猫高橋の手伝いをするため、

資料準備や整理に追われている。

軍人というよりは事務員のような仕事ばかりだが、

もともとは事務作業が好きなので全く苦にならなかった。

むしろ一人で黙々と作業できるので好都合だと思っていたが、

猫高橋も遼香もしっかり緑箋のことを見て世話をしてくれているのが、

なぜか不思議と心地よかった。

前の世界では、一人放っておいて欲しいと常々思っていたのだが、

とてもいい距離感で見守ってくれている二人の心づかいがとても嬉しかった。


ちなみに緑箋の準備も着々と進んでいた。

まだ訓練期間中である緑箋は、

各種訓練もしながらということになっていて、

遼香班としては一人の新入隊員だったので、

一人で訓練室で説明書に沿って訓練をしている。

そこで緑箋は今回の件のお願いとして、

緑箋の訓練中に時間があれば訓練を付き合って欲しいというお願いをした。

二人は喜んでその訓練に付き合ってくれた。

遼香はもちろん戦闘狂なのでいうまでもなかったが、

猫高橋の実力も相当なものである。

単純に事務作業のスキルが高いだけではここに入れない。

緑箋はそれを思い知らされていた。

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