第280話 三人の選択

猫高橋が選んだのは食事対決だった。


「魔王が二人お料理で競い合うって楽しそうじゃないですか。

自分で料理できるのかわからないですが、

二人とも美味しいものはたくさん食べてるでしょうし、

美味しいものはたくさん知ってると思うんですよね。

だからそんな二人が作る最高の料理で対決するって、

新しい料理が誕生する場面が見れるかもしれないから、

個人的にすごく興味があるんです」


「まあ確かに二人がどんな料理を作るのかというのはみてみたい気がする。

でも朱莉は美味しいものを食べたいっていう邪念があるように感じるんだが」


「えへへ。

遼香さんのいうとおり、正直それもあります。

でもこの案件は日本の平和がかかってるので、

そういう邪念はほんの少しだけしかありませんよ」


あるんだ。

緑箋は心の中で突っ込んだ。


「でも僕もすごいいい案だと思います。

平和的に解決できそうですし、

意外といい勝負になるので白熱するんじゃないでしょうか」


「ありがとう緑箋君。

じゃあ私の選んだのはこんなところで。

次は遼香さんが選んだものを教えてください」


「私が選んだのは、

私と戦って……」


「却下です」


猫高橋が即切り捨てた。


「じゃあ最後は緑箋君だね」


「ちょっと待って朱莉。

最後まで話を聞いてくれ」


「いやいや、遼香さん、あの二人と戦いたくなっただけでしょう?」


「そういうことじゃないって。

いや正直そういうこともあるけれど、

二人のイライラした心を吹き飛ばせるのは、

やっぱり力を発散させた方がいいと思うんだ。

それに直接対決されたら困るから、

その間に私が入ることで、

力も発散できるし、

私も戦えるし、

みんなが納得できる素晴らしい案だとは思わないかね?」


「ダメです却下です。

戦い以外で考えましょうと言ったでしょう?」


「いや、まあ確かにそうなんだが、

それでもしっかり考えた結果、

私が戦うというのが一番いいんじゃ……」


「もうー。

遼香さん。戦いは遺恨を残すかもしれないから、

面白い感じの勝負を考えようって話だったんでしょう?

結局戦いになったら意味ないじゃないですか。

私は昨日勝負を考えると遼香さんが提案した時から、

多分遼香さんは戦いたいんだなと思ってましたよ!」


「お見通しということか」


「遼香さんのそばにいたら誰でもわかります。

というか遼香さん最初から戦闘するために話を通したところありますよね?」


猫高橋に次々と論破されて、

流石の遼香もタジタジである。


「遼香さんの話はこれで終わり。

じゃあ緑箋君が選んだのを教えてもらえるかな?」


遼香はしゅんとしている。

これが今の日本の最高戦力の一人である。


「僕が選んだのは、これです」


緑箋は選んだものを見せた。


「あら、これでいいの?」


「まあ確かに魔王が好きそうな勝負ではあるが」


二人は普通の提案に少し呆気に取られていた。


「でもよくみてください。

これは普通とは逆なんです」


「逆?」


二人は声を揃えた。


「ああ、なるほど、確かにそうだな。

普通は魔王たちがやることを、

魔王たちにやってみせるということか」


「そういうことです」


それはいいかもしれないなと二人は考え始めた。

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