第279話 真剣な雑談

「なんだ、二人とも楽しそうにやってるじゃないか。

私も混ぜてくれよ」


「何言ってるんですか。

遼香さんを待ってたんですから。

会議は無事終わられたんですか?」


「うーん。

まあ無事といえば無事だな。

とりあえず今のところは最悪の事態を避けられたというところだから、

そこに関しては一定の評価をしてくれたよ」


「遥香さんが評価してくださったのなら良かったですね」


「まあ遥香もただの堅物な訳じゃないからな。

ちゃんと押し引きはわかってるよ」


「もちろんそれは理解してますけど、

なかなかお認めにならないでしょう?」


「まあ最善を尽くしても尽くしきれないことがあるからな。

こういう時はより慎重になるものだよ。

向こうの気持ちもわかるし、

向こうもこっちの気持ちがわかってるからな」


「双子ですものね」


猫高橋はそう言って笑った。


「そうなのかな?

多分双子でなくともわかるんじゃないかと思うんだが。

朱莉の気持ちだってわかるように努力しているぞ」


「確かに、心を読む魔法使ってるんじゃないかって思うくらい、

遼香さん鋭いですもんね。

緑箋君も変なこと考えちゃダメだよ」


突然矛先を向けられて緑箋はびっくりした。


「大丈夫です。変なことは考えませんので」


「ははは、朱莉よりもしっかりしてそうじゃないか」


「まあ確かに、緑箋君はしっかりしてますけど」


猫高橋は少しだけ拗ねて見せた。


「いやいや、猫高橋さんには助けてばかりですよ」


「緑箋君、そういうところがしっかりしてるっていうことだよ」


三人は笑った。


「さあ、無駄話はこれくらいで。

結構勝負案来てるみたいじゃないか」


「そうなんですよ。

急ぎって伝えたこともあって、

みんなたくさん送ってくれました。

今二人でまとめてるんですが、

途中経過の資料は送っておきましたよ」


「おおーありがとう」


遼香も資料に目を通していく。


「なるほどなあ。

確かに面白いものが多いな。

単純なものほど面白そうではあるが、

この勝負で魔王の二人の勢力図が変わるかもしれないってことは、

誰もわかってないんだろうな」


「それは言ってないですから、

誰も分かりませんよ」


「そうだよな。

だからこそこんなくだらない勝負で決めることが面白いんだがな」


「面白がってるのは遼香さんだけですって。

私たちは真剣に考えてますから。

ね。緑箋君」


また急に話を向けられてしまった。


「でもいいんじゃないでしょうか。

魔王たちにも遼香さんが提案したもので、

しっかり勝負してもらうというのは受け入れてもらいましたし、

その結果を反故にするような二人ではないと見受けられました」


「あの二人の魔王は魔王と呼ばれてはいるが、

またちょっと違った感じの魔王だからな。

今まで我々と敵対関係になったことも実はないんだ。

だからこのままより友好的な関係を築いていけたらいいと思ってる。

多分向こうもこちらと戦う気はないと思う。

どちらかといえば面白ければいいという感じだと思うがなあ」


「でもしっかり対処しないと大問題になるのは間違いないですからね。

どうですか?

いい案はありましたか?」


「そうだな。

とりあえず三人で一つずつ案を出してみようか」


「そうですね、そうしてみましょう。

緑箋君も考えてね」


三人は勝負案から一つお気に入りを探し始めた。

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