第269話 二人の誇り

こういった問題の解決方法はどちらかが折れるしかない。

どちらが先に笑ったのか、もしくはバカにしたのか、

おそらくそれはどちらも先であるし、

どちらも後だと思っているのだろう。

鶏が先か、卵が先か、

揉め事というのはそんなものである。

ただ山ン本の話を聞く限り、

即何かを起こそうと思っているわけではないところは収穫であった。

しかし鬱憤は相当溜まっているようで、

危ないことは危ないのは確かである。

指輪や腕輪のことに関してはこのままで問題はなさそうだが、

逆に二人の誇りの問題という点において、

余計にややこしい問題になっているようだった。

遼香はここで一つ提案することにした。


「この後神ン野様にもお話を伺う予定なのですが、

おそらくこの件は平行線になると思われます。

山ン本様の話を伺った限り、

指輪と腕輪の問題はきっかけにすぎず、

やはりお二人の誇りの問題かと思います」


「まあ確かに桜風院殿のおっしゃる通りかも知れません。

長年のあいつとの関係性の上で、

今回の件が引き金になってしまったところはあるでしょう」


「となればやはりどちらも簡単には引き下がれないでしょうし、

なかなかどちらかが折れるということもないのではないでしょうか?

しかもお二人ともいつまでもこのような問題に、

囚われ続けているのも気分が悪いでしょう」


「その通りです」


「ここで一つ提案がございます」


「提案とは?」


「お二人がスッキリ決着がつけられるようにしてみるのはいかがでしょうか?」


「というと?」


「お二人が戦って勝ち負けを決めるというのは、

私どもとしても避けていただきたい事案でございます。

これはおそらくお二人とも同じ考えではないかと思います」


「最悪の最悪の選択ですからな」


「戦争以外でお二人で勝負をしていただいて、

その結果をしっかりお受け止めていただくというのはいかがでしょうか?」


「まあ確かにこのままでは埒が開かないというのはその通りですが、

一体どういう勝負を考えておられるのですか?」


「今はまだ具体的な案はございませんが、

お二人が納得いただけるような勝負を考えさせていただきます。

この提案を後程、神ン野様にもさせていただきますが、

もし神ン野様がお受けいただけるとなれば、

山ン本様もお受けいただけますでしょうか?」


「なるほど……。

まあ神ン野の野郎が受けるというのであれば、

私が受けないというわけには行きますまい。

桜風院殿のご提案の勝負となれば、

おそらくどちらが有利ということもないのでしょう?」


「もちろんでございます。

お二人がスッキリできるような勝負を考えてまいります」


「わかりました。

桜風院殿がそこまでおっしゃられるのであれば、

この不祥山ン本、しっかりと勝負を受けさせていただきましょう」


「ありがとうございます」


遼香はまず一人目を陥落させることに成功した。

まだ道のりは遠いけれど、

解決の光が失われていないことは確かだった。

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