第267話 山の中の迎賓館

猫高橋が連絡を終えると、

ただの森に見えた中に巨大な木造の門が出現した。


「これはすごいですね」


「出入りは大きい方がしやすいってことだね」


三人が門の前に進むと、

自然と門が開いていく。

門の中には巨大な空間が広がっており、

松明が奥まで並んでいるが、

その奥がどうなっているかまではよく見えない。

門の中には緑箋と同じくらいの背格好の子供が待っていた。


「ようこそおいでいただきました。

ご案内いたします」


少年は丁寧にお辞儀をすると、

三人を中に誘った。

少し奥へ進むとソリのような乗り物があった。

三人は並んでそのソリの中の椅子に乗り込むと、

少年は手前に座ってソリを浮かばせて奥へ進んでいった。

入り口から続いている通路を抜けると、

中には巨大な空間が広がっていた。

中は明るく何かに照らされているようで、

山の中なのにお昼のような明るさだった。

ただ違うのは空には青空ではなく、

天井が広がっているということだけだった。


地面には普通に街並みが広がっていた。

見えるところで一番大きな建物はやはり天守閣のようだった。


「あそこに見えますお城が、

山ン本五郎左衛門様の居城でございます」


山ン本五郎左衛門の城下町ということなのだろう。


「今回はお城ではなく、

その前にあります迎賓館で会合を行わせていただきたいと思います」


「はい、そう伺っております。

よろしくお願いいたします」


猫高橋の返答に少年は頷くと、

ソリはその迎賓館の方へ向かっていくようだった。


お城まで進まずにソリはまた門を潜っていく。

門の中には庭園が広がり、

山の中だというのに、色とりどりの花が咲いている庭があった。

その奥に西洋風の二階建ての建物が三人を迎えてくれた。

建物の前でソリが止まる。


一行は迎賓館へと足を進め、

正面の吹き抜けのホールを進み、

奥の来賓室へと通された。


巨大な長い机と、椅子が並んでいる。

三人はその長い机の中央に並んで座った。

それに合わせて、

給士とみられる妖怪が三人にお茶を持ってきてくれる。

案内してくれた少年が話し始める。


「わざわざこんな山奥までご足労いただきまして本当にありがとうございます。

主人にはご報告させていただきましたので、

時間までここでしばしお待ちいただければと思います」


予定の時刻よりは少し早めに着いているようである。


「ありがとうございます。

定刻に始められそうでしょうか?」


「もちろんでございます。

なんの問題も起きておりませんので、

予定通り始めさせていただければと思います。

また何かありましたら、

あちらのものにご申し付けください」


少年はそういうと丁寧にお辞儀をして部屋を出ていった。

先ほどお茶を持ってきてくれた給士が前を見据えて立っていた。

緑箋はここで作戦会議ならぬ情報共有があるのかと思ったが、

特に何もなく、

三人はのんびり先ほどの山の話や、

街の話をしながら時間が過ぎるのを待っていた。


そして定刻より少し前に、扉が開いた。

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