第263話 ようこそ

遼香は話を続ける。


「基本的に緑箋君は私についていてもらうことになる。

入隊早々申し訳ないが、

明日は広島へ行って、魔王と対面するので、

それについてきてほしい。

これは猫高橋も同席するので、

三人で行くことになる」


「そんな大事な席に僕が同席しても大丈夫なんですか?」


「まあ大丈夫だろう。

向こうは私以外の誰が参加したなんてことに興味はないだろうし、

今までのこともたいして覚えてないだろうから、

緑箋君が参加しても多分大丈夫だと思うよ」


「そんなものなのでしょうか?」


「まあ確かにそんな感じでしょうね。

魔王たちは基本自分達以外は下にみてますから。

遼香さんはその中で力を示しているので、

もちろん一目置かれているわけですが、

それ以外の人間には基本的に興味ないと思いますよ」


猫高橋も同意する。


「初めての任務が魔王と対峙するということになるので、

緑箋君も緊張すると思うけれど、

それは仕方がない。

これからは基本的には私と共に活動してもらうことになるので、

それに慣れてもらいたいと思う。

だから今回も気を追わずに、

一緒についていくだけだと思ってもらって構わないよ」


今回の遼香の話ぶりからはいつものような裏がない、

緑箋は遼香も少し気を遣ってくれているんだなと感じていた。

気を使って初任務が魔王との会合というところがすごいところではあるが、

本当に何もないと思っているようなので、

そこは少し安心していた。


「わかりました。

僕はただ静かに参加させていただきます。

でも一触即発の雰囲気なんではないんですか?」


緑箋の問いかけに、遼香と猫高橋も困った顔をしている。


「緊張感が高まっているのは確かなんだが、

あの二人のことだから、こればっかりはどうなるかさっぱりわからないのだよ」


「遼香さんのいう通り、

結局理屈じゃなくて気分で話が変わってくるから、

何か二人が面白いと思うことがあったら、

すぐに忘れちゃったりもするのよね。

まあだからこそ逆になると怖いのは怖いんだけれど」


気分で色々変わるのは遼香もそうじゃないかと思ったが、

流石に遼香も大事なことはしっかり決めると思うので、

また違った意味で二人の魔王は厄介なところなのだろう。


「まあこんなところだな。

入隊したあと、実際は訓練期間があるんだが、

緑箋君はこのまま私と同行しながら、

その間に猫高橋から指導してもらうことになる。

明日も猫高橋が迎えにいくから、

あとは猫高橋と一緒に話をまとめてくれればいい。

そのあとは緑箋君は今日は色々準備もあるだろうから、

今日はもう上がってもらっていいよ」


「わかりました。

これからよろしくお願いします」


緑箋は立ち上がって遼香と猫高橋にお辞儀をした。


「ようこそ、遼香隊へ」


緑箋は遼香と猫高橋と硬く握手をした。

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