第262話 緑箋の所属

「さて、緑箋君、所属についてだが、

完全に私の直属の部隊に入ってもらうことになる。

これは師団とは別の部隊になっている。

大将直属軍ということになる。

通称遼香隊。

わかりやすいのが一番いい。

軍と言っても所属しているのは十名程度だ。

おいおい緑箋君にも紹介するが、

全員が全員把握しているわけではない。

全員のことを把握しているのは私だけだ。

猫高橋も遼香隊所属だが、

もちろん全員のことは把握していない。

ただ基本的な連絡は猫高橋からしてもらうと思う」


「わかりました。

お二人とご一緒できて光栄です。

よろしくお願いします」


緑箋の挨拶に、

二人は微笑んで頷く。


「直属の上司と部下という関係にはなるが、

基本的には今までと変わらず接してもらえたらいい」


「それは無理ですよ」


「まあ確かに公の舞台ではそれなりの対応をしてもらうことになってしまうが、

それ以外の場所では、むしろ今まで通りの関係でやってもらいたい。

緑箋君は私に勝ってるんだからね」


「そうですよ、緑箋君。

もうこうなった遼香さんは誰のいうことも聞きませんから」


猫高橋も笑っている。


「はっきり言っておくが、

緑箋君のことを部下だとか後輩だとかは思っていない。

一人の魔法使いとして私に力を貸して欲しい。

そして日本のために力を貸して欲しい。

私が緑箋君をここに誘ったのは単に私の物好きなところだけじゃない。

緑箋君の力を貸して欲しいと思っているからということは理解してほしい。

もちろん立場の差というのはどうしてもできてしまうし、

軍という中の規律をしっかり守らなければならない立場ではあるが、

それを取っ払って自由に動いてもらうのが、

この遼香隊の役割なんだ。

猫高橋もしっかりそれは理解してくれているから、

今こんな感じになってるわけだ」


猫高橋はそれほどでもありませんという顔をして頭を掻いている。


「緑箋君。

基本的に遼香隊は遼香さんが気に入った人を集めた寄せ集めみたいなものだから、

遼香さんのいうとおり、

緑箋君の力を最大限に発揮することだけ一番に考えてもらいたいの。

遼香さんのお墨付きがあるってだけで、

もう緑箋君の力はみんなに理解してもらえてるし、

今日もしっかり活躍してもらったから、

今のままの関係で一緒に頑張りましょう」


猫高橋もそう言ってくれているので、

緑箋も腹を括った。


「わかりました。

まだ何ができるかはわかりませんが、

誠心誠意任務を全うしたいと思います」


「まあそんなに気を張らずにいてくれていい。

まずは軍にも遼香隊にもゆっくり慣れてくれればいいから、

着実に進んでいこう」


遼香の言葉に緑箋も力強く頷く。


「じゃあ明日は魔王に一緒に会いに行ってもらうわけだが」


着実に進んでいこうと言った側から、

緑箋は明日、魔王と対面することになっているようだった。

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