第254話 遼香の思い

「さあ、皆さん、私と戦ってみてどう感じたでしょうか?

案外歯応えがなかったと思った人はいないかと思いますが、

それでもそれなりにやれるんじゃないかと思った人もいるでしょうか?

完膚なきまでに叩かれてしまったと心が折れてしまった人もいるかもしれません。

みんながそれぞれの想いを感じ取ったと思います。

今回は特殊な形式だったので、

自分の得意でない行動を取らざるを得なかった人も多かったと思います。

それぞれの各人が自ら努力し、

戦場でも、戦場の外でも、その力を発揮して欲しいと思っています。

これくらいならやれるはずだったとか、

自分の実力を過信してたと思ってしまった人も多いかと思います。

大いに反省してください。

しかし決して落ち込まないように。

失敗したらまたやり直したらいい。

訓練では何度でも繰り返しやり直すことができます。

いやむしろ訓練だからこそ、あらゆることを想定して、

たくさん失敗してたくさん学んで欲しいと思っています。

我々はあなた方の成長する努力を決して笑わない。

むしろ一緒に失敗して、一緒に成長していきたい。

我々はそのためにする労力を厭わない。

もし次に私と模擬戦をすることがあったなら、

私に勝つという意気込みで、

直接戦わないならば、

上手に支援することで、お互いに切磋琢磨している姿を見せてもらいたい。

もちろん私もそう簡単に倒れるところは見せませんが」


遼香は不敵に笑った。

なんだかんだ言ってまだまだ負ける気はなさそうである。

日本の最高戦力の一人というか、

世界の最高戦力の一人でもある桜風院遼香は新入隊員たちに圧倒的な力を見せつけ、

心を引き締めると同時に、

新入隊員たちと心を繋ぎ合わせた瞬間でもあった。


「これからさまざまな部署で皆さん活動されるわけですが、

まずは数ヶ月の研修で基本的なことを、

しっかり学んでしっかり身につけていただき、

その後それぞれの専門性を活かして欲しいと思っています。

なかなか先輩や上司にお願いすることはむずかしかと思いますが、

思い切って自分の思いを伝えてください。

あなたの成長のためなら、協力を惜しむ人はいないはずです。

時には挫けることもあるでしょう、

その時には必ず周りの人に話してください。

弱音を吐けるところもありますから、

そこも有効活用してください。

あなた方は一人ではありません。

私たちがいます。

それを決して忘れないでください。

誰かに話して受け入れてもらえなかった時は、

すぐに別の人を探してください。

必ずあなたのことをわかってくれる人がいるはずです。

より良い世界にするために、あなた方の力を貸していただきたい。

共に成長しましょう。

今日は入隊、本当におめでとう!」


遼香が頭を下げると、会場からは万雷の拍手が降り注いだ。

少しだけ戦闘で心が折れかけていたような新入隊員たちも、

また一つ心に気合いを入れ直すことができたようだった。

遼香の言葉にはやはり力がある。

緑箋もまた遼香の言葉に勇気づけられた。

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