第253話 対新入隊員戦の終わり

遼香無双で終わった新入隊員歓迎の戦いだった。

遼香がどうやって爆発を防いだのかがなんとなく理解され始め、

拍手喝采が周りから巻き起こり始めていた。

遼香は手を挙げてその声援に応え、

そして手を叩いて新入隊員たちの頑張りも讃えていた。


緑箋も姿を現してはいたが、

誰も気にしていないので、

そそくさと退場しようとしていた。

しかし勿論その様子を遼香が見逃すわけもなく、


「今回の私の素晴らしい相棒も讃えて下さい。

薬鈴木緑箋君です!」


手で緑箋の方を示されて注目が集まってしまった。

緑箋は仕方なくその歓声に応えるように頭上で手を叩いた。


緑箋は五分経った後消えていたのだが、

消えて隠れていたわけでは勿論なく、

遼香に当たる魔法の全てを透明の魔法障壁でことごとく防ぎ切った。

体術については遼香に叶うものはほとんどいなかったので、

飛んでくる魔法に関してのみ対処すればよかった。

また新入隊員たちの中に遼香が入ったことで、

魔法攻撃の数は減り、

さらに魔法攻撃も単純になったため、

防御はかなりしやすかった。

散弾関しても味方に当たってしまう可能性が高くなったために、

使用する人はかなり少なく、

これも緑箋が完封できた理由の一つである。


ちなみに遼香の瞬間移動先の印を設置していたのは勿論緑箋である。

実を言えば一つだけではなく、

かなりの数の印を場内に設置していたので、

遼香は移動しようと思ったら移動放題だった。

遼香があれだけ余裕を見せながら歩いていたのはそういった面もあった。


しかし実はそんな保険よりも、魔法が自分のところまで届くはずがないと、

緑箋の実力を信じ切ってゆっくりと進んでいたところが、

遼香の胆力の凄さであり、

それに見事に応えた緑箋もすごかったわけである。


ちなみに緑箋はその存在感を消した後、

自由に動き回れたのだが、

緑箋が攻撃して退場させた生徒は皆無である。

これは防御に徹していたからという理由もあるが、

後ろから魔法で攻撃することは可能であった。

にもかかわらず緑箋が魔法攻撃をしなかったのは、

あくまでも攻撃対象が遼香で、

新入隊員たちは遼香と戦いたかったわけなので、

戦って破れるなら遼香と戦ってもらいたかったという理由である。

この辺りは勿論遼香とは打ち合わせは全くしていなかったが、

防御は緑箋、攻撃は遼香という役割分担は、

二人とも当然のように受け入れていた。

まあ緑箋も遼香の巻き込みに慣れ始めていたということなのかもしれない。


「皆さんありがとうございました。

今回の結果は私、

いや私たちの勝利となりました!

新入隊員の皆さんと楽しいひと時を過ごせたんじゃないかと思います」


遼香の発言に対してまた会場中から拍手が鳴り響いた。


「それでは一旦また会場に戻ります」


遼香は大きく手を上に掲げると、

またパチリと指を鳴らした。

一同はまた室内訓練場へを場所を移し、

新入隊員たちも式典の席に一斉に移動してきていた。


遼香は壇上に立ち拍手で新入隊員たちを讃えていた。

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