第252話 爆発の後

徐々に煙が晴れていく。

大きくえぐれた地面の上には誰も立っていなかった。


「やった!倒したぞ!」


遼香がいなくなったということは、

攻撃が当たって退場してんだと思った新入隊員たちは喜びの声を上げた。

しかしその後ろで指をパチリと鳴らされ、

全ての新入隊員たちは衝撃派によって退場させられた。


「最後まで隙を見せてはいかんな」


遼香は落ち着き払って一言呟いた。

会場内ですでに退場した新入隊員や観客たちからは、

一言も声が出ない様子だった。


会場に最後の様子が映し出される。

簡単にいえば、

地雷は最初から緑箋に把握済みであり、

全ての地雷の上にはすでに魔法防御壁が張り巡らされていた。

勿論それは遼香にも共有済みである。


ちなみに地雷型の魔法というのは魔法としては極めて難しい魔法である。

兵器としての地雷であれば、

重量検知でスイッチが押されるという簡単な仕組みなのだが、

魔法で重量検知というのは結構難しい。

基本的には魔力感知式ということにな理、

別の魔力が触れると爆発するというのが多いと思う。

今回はすでに魔力防御壁がその上に置かれていたので、

踏まれれば壁の魔力に反応して爆発するということになっていた。

爆発しても壁によって威力は消されているので効果はない。

しかし今回はその煙を多くするために、

遼香は爆発すると同時に枝や枯れ葉を引き寄せ、

より煙が出るように燃やさせていた。

そして煙に包まれると同時に瞬間移動により新入隊員たちの後ろへ飛んでいた。


瞬間移動というのもなかなか難しい魔法であり、

これだけ人数がいるような場所で瞬間移動するのは容易なことではない。

移動先に何か物質があったり他の人がいたりしたりした場合、

とんでもないことになることもあるからだ。

まあ実を言えば遼香は自由自在に瞬間移動できるわけではない。

お話のように突然敵の背後に現れるというようなこともできなくはないが、

お互いに移動できる中で、

瞬間移動を確実に行うのはかなり難しい。


遼香は式辞の時に、突然新入隊員の席から壇上へと瞬間移動して見せたが、

そのようにすでに移動する場所が決まっている時はやりやすい。

また一度その場所に行っている場合も移動しやすい。

単純な理屈を言えば、

移動する場所があらかじめ決まっているということだ。

転移装置などと同じで、

すでに移動先に転送するための印があるので、

そこに移動すればいいという仕組みである。


今回もその仕組みが使われていて、

すでに移動先の印が置かれていたので、

遼香は背後をつく形で瞬間移動することができた。


最初から瞬間移動を使って攻撃していけば簡単に終わっていた、

といえばそれまでだが、

別に今回の試みは新入隊員の心を折りたいわけではなく、

あくまでも新入隊員を歓迎する一環としてのお祭り的な催しである。

遼香的にはそういった楽しみで遊んでもらいたいという気持ちだったのだが、

結果として蹂躙する形になってしまった。

とはいえそれくらいで折れるような新入隊員たちではなかったのが、

救いになったのだが、

それはもう少し先の話である。

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