第251話 遼香蹂躙

あっという間に半数以上の新入隊員たちが退場していった。

しかし遼香の周りの人数が減っていたことと、

遼香の周りに新入隊員たちが散らばるように散会したため、

今度は逆に遼香が攻撃を受けやすくなる展開になった。

そして中には自分だけ身を守るように防御するものなども現れた。

防御をしても勝てないのでこの戦闘においては意味がないのだが、

あまりの恐怖に身を守りたくなるという気持ちもわからなくはない。


しかしそんな壁などをうまく利用して、

隠れながら魔法で攻撃したり、

さらに飛んで空中から攻撃を仕掛けてきたりと、

だんだんと攻撃の数が増えてくるようになった。

もう残り時間も少なくなってきたので、

残っている新入隊員たちも決死の覚悟で魔法を使い始めたのだ。

はっきりいって攻撃を当てればいいだけなので、

ファイアボールのようなわかりやすい魔法で攻撃するよりも、

速度が早くて見えにく魔法や、

霰弾のようにとにかく一度に射出できる数の多い魔法などの使用も増えてきていた。


初めはどの魔法も遼香に当たる直前で消えていくように見えていたのだが、

今は遼香に魔法が届くことさえなかった。

ともすれば魔法が発射された瞬間、

詠唱者の目の前で魔法が消えていくように思えることすら多くなってきた。

新入隊員たちは魔法が出せなくなったと混乱しながら、

必死に攻撃を続けている。


もう残り数十人にまで減らされた新入隊員たちは遼香に近づくことさえできず、

遠くから魔法を撃とうとしても撃てずに消えてしまい、

もうどうすることもできなくなってきてしまった。

このままでは膠着状態が続くだけである。

あらかたの勝敗の行方が分かり始めて、

残った新入隊員たちも諦め始めている空気が漂っていた。

無理もない何もできることがなくなっているのだ、

これほどまでに完封されるとは、

鼻っ柱の強い新入隊員たちも思っていなかった。


倒すことは難しくても攻撃を当てるくらいは楽勝だろう。

ましてや五千人も新入隊員がいるのだから、

誰が一番最初に攻撃を当てられるのかの方にみんな興味を持っていた。

しかしその思いは最初の数秒で変わり、

遼香が攻撃をしてこない五分間を過ぎると、

もう恐怖に変わってきていた。


しかし新入隊員とはいえ、

選ばれし精鋭たちでもある。

残った新入隊員たちはそれぞれ一定の距離を保ちながら、

残りの魔力を振り絞って一斉に攻撃し始めた。


「その意気やよし」


遼香は一言そう告げると、

全く届かない魔法を気にもせずにゆっくりと新入隊員にまた近づいていく。

数人の新入隊員は逃げずにそこから魔法を撃ち続ける。

遼香がそこに近づいていっても、

もう覚悟を決めたように魔法を撃ち続けていた。

そして遼香が目の前に来たところで、

遼香の足元の地面が爆発する。

地雷式の魔法が設置されていたようだった。


遼香はその爆炎の煙の中に姿が見えなくなる。


「よしやったぞ!」


残った数人の新入隊員たちは煙の中を祈るように見つめ続けていた。

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