第250話 遼香前進

輝きは収まり、見た目は全く変わっていない遼香だったが、

遼香の周囲の空気は揺らぎ、

明らかに遼香の魔力の密度が違う。

遼香の周りに何か引力のような力が働いているのかと勘違いするくらい、

遼香に引き込まれそうになってしまう。

そのあまりの遼香の姿に新入隊員たちは見惚れてしまって、

攻撃の手が止まる。


その瞬間、緑箋はおとおふとみみえんの呪文を唱え、

姿を消した。

しかし全ての意識は遼香に向けられており、

元々緑箋に注目している人はいなかったので、

緑箋がいなくなったことに気がついた人は全くいなかった。

そしてその存在は終了するまで誰にも気がつかれることはなかった。


緑箋が姿を消したのと逆に、

遼香はその存在感を増していった。

遼香は何の気にもせずに、前にゆっくりと進み出した。

周りを囲むようにしていた新入隊員たちは、

ただ歩いている遼香の圧に押されるように後ろに下がっていく。

遼香はそのままゆっくりと前に進んでいく。

何の防御もしていない遼香が進んできているだけだと、

何人かの新入隊員たちは気がつき出し、

魔法攻撃を再開していく。

しかしその魔法は遼香の目の前で消えていく。

それなりの強力な魔法も全て遼香に当たらずに消えていくのと、

あまりに密度の濃い魔力を持つ遼香がゆっくりと近づいてきている恐怖に、

新入隊員たちは一種の混乱状態に陥っていく。


攻撃を続ける新入隊員たちはほとんどおらず、

遼香が近づいてくる遼香の近くの新入隊員たちは後退りし始めていた。

しかしまだ後方の新入隊員たちはまだその圧をそれほど感じていなかったので、

前と後ろの新入隊員たちの心のズレが生じて、

後ろに壁ができたようになってしまい、

前方にいる新入隊員たちが逃げられなくなってしまった。


遼香はそのままゆっくり近づくと、

新入隊員たちの前でパチンと指を鳴らした。

指から放たれた衝撃波によって、

遼香の近くの新入隊員たちが退場させられていく。

遼香の近くの新入隊員たちは逃げるか、

逆に特攻するかを迫られてさらに混乱が広がる。

特攻してきた生徒たちの攻撃はなぜか全て直前で消えてしまい、

逆に遼香にいなされて退場していく。

遼香は新入隊員たちの中に入り込んで歩いているので、

遠くから攻撃することもできなくなってしまい、

逆に遼香に対する攻撃の手が緩んできてしまっていた。


攻撃が当たった瞬間に退場となるので、

強化魔法を使って魔法の威力を弱められていたとしても退場してしまうので、

しっかり防御しなくてはいけないのだが、

遼香は目の前にいて、

すでに混乱した状況では、

しっかりとした魔法防御を展開することができず、

また協力することも叶わなくなってきており、

どんどんと遼香の周りの新入隊員たちが綺麗に退場していってしまう。

上空から見ていると、一定時間経つたびに、

遼香の周りに円形の空白ができていく様子が綺麗ですらあった。

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