第248話 魔法防御とは

遼香の攻撃が始まる前に、

新入隊員たちは激しく魔法で攻撃してきていた。

緑箋は防御魔法、魔法の壁を作って防御するよりも、

土を使って物理的に魔法を防ぐ方向で防御を進めていた。

単純に周りを囲んでしまえば魔法は直接あたらない。


ただここで魔法を防御するとは何なのかということがとても重要になる。

防御魔法でよくあるのはバリアーのような透明の壁であろう。

その壁に魔法が当たることで直撃をふせぐ訳だが、

その壁を破壊する威力の魔法がくると壁は破壊されてしまう。

なぜ壁は壊れるのか。

壁には強度があり、耐久性以上の威力の攻撃を受けると破壊される、

これは元の世界の物理法則に則っている。

だが魔法世界の壁の耐久力とは何なのか、

もっと言えば魔法の攻撃の威力とは何なのかということになってくる。

ファイアボールが当たって攻撃を受けた時のその威力は何なのか、

炎の中に何か核となる物質があるのか、

単に炎が当たっているだけなのか、

炎が当たることによって爆発するのか、

ファイアボールという魔法が当たると削られるというだけのことなのか、

これはその世界によって定義が変わってくるのだろう。

魔法でものを呼び出して攻撃するのなら、

鉛の弾丸を高瀬奥で射出すればいい。

それならファイアボールをゆっくりと避けられるなんてようなことはない。

また巨大な石礫いしつぶてを投げつければ、

防御魔法など粉々に壊れてしまう。

また巨大な岩で押し潰してしまうのもいいだろう。


とまあ色々な魔法の考え方はあるのだろうが、

この世界では物理と魔法の半々の威力があると思ってもらうといい。

魔力と魔力のぶつかり合いによって、強弱がつけられているようである。

それに五行思想のような属性関係によってさらに強弱がつけられている。

全般的に聞くような透明の防御魔法は、

どの属性にも強い面がある代わりに、

平等に攻撃を受けてしまうので壊れやすいという欠点もある。


そこで緑箋は防弾ガラスのような意識を防御魔法に入れることで、

硬軟併せ持つ状態を採用することで、

より壊れにく魔法を開発してきたのである。


ということなのだが、

緑箋はここまで全くこの防御魔法を使うことなく、

土壁によって防御することに徹してきた。

この理由は簡単で、

厚い壁を使って防御できる状態だからである。

今回は五分間ただ防御しかできない。

ということは自分の攻撃を気にしなくてもいい。


実際の戦闘において防御の壁を厚くするということはあまりない。

こちらの攻撃も防いでしまうので、

ただの邪魔な壁になってしまう。

戦闘においてはそれは意味がない。

自分の魔力をすり抜ける、

もしくは自分の防御範囲外から魔法を射出する、

そういう方法が取られるのが一般的である。

とは言えただ壁に囲って防御するだけでは味気ない。

せっかくの新入隊員の歓迎式典の一環であるのだから、

しっかり魅せる仕事をしなくてはならない。

緑箋も新入隊員の一人であるにも関わらず、

ここまで考えて行動しなくてはならないのが、

遼香の考えを実行する時のめんどくさいところでもある。

ただこの難題に答えることは嫌いではないと緑箋にも思わせてくるところが、

遼香の底知れない魅力なのだろう。

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