第242話 入隊式開式

入隊式が始まった。

緑箋は隣の人物のせいでまったく集中できなかった。

隣の人物のせいで別の緊張感が高まっていた。

軍隊への入隊ということで、

かなり厳かな雰囲気で式は行われていったが、

基本的にな入隊式と同様であり、

様式に則って行われていた。


五千人が軍に入隊することを任命し、

それに答える形で新入隊員たちも答える。

打ち合わせのない形で行われているが、

説明はされながらなので式は問題なく進行していく。


来賓の祝辞が行われる。

その最初に現れたのはもちろん、

魔法総監、桜風鈴遥香である。


「この素晴らしい晴天の元、

本日は特別な日であり、喜びに満ちた日に、

皆様を迎えられたことを心より嬉しく思います。

魔法軍の入隊式を迎え、

皆さんがこの偉大な組織の一員として誇りを持ち、

新たな一歩を踏み出すことができることを心から感謝いたします」


「魔法軍は、わが国の安全と繁栄を守るために、

その命を捧げることを誓った英雄たちであり、

その使命は重大でありながらも誇り高いものです。

今日、皆さんがこの壮大な使命を理解し、

魔法軍に入隊してくれることを大変力強く思っています」


「魔法の力は、危機に直面した時や困難な状況下で、

私たちの手に安全をもたらす強力な武器です。

しかし、その力を行使することは常に慎重な判断と責任を伴うものです。

皆さんには、その力を使うことで、平和と秩序を維持し、

国民の安全を守る使命を果たす責任があります」


「私たちの先人たちは、長い年月をかけて、

この魔法の世界を築き上げてきました。

その歴史と伝統を背負い、未来への希望を託された皆さんが、

その重みを理解し、我々と共に切磋琢磨してくれることを心より願っています」


「入隊式を迎える皆さんには、

勇気と決意を持ち、

使命を果たすために努力し、

困難に立ち向かう強さを発揮してほしいと願っています。

そして、仲間との絆を大切にし、助け合い、支え合いながら、

より良い未来を築いてくれることを期待しています」


「最後に、皆さんの未来が明るく輝き、

成功と幸福に満ちたものになるよう、

我々も力を尽くすことを御約束いたします。

ご入隊本当におめでとうございます」


遥香の落ち着いた伸びやかな声が会場内に響き渡り、

遥香の礼と共に場内は割れんばかりの拍手が鳴り響いた。


「たまにはいいこと言うよね」


遼香は拍手しながら緑箋に囁いた。

そんなことが言えるのはこの日本で、

いや世界中で遼香だけしかいないかもしれない。


「静かにしましょう」


緑箋はどちらが新入隊員かわからないような注意を、

遼香にしなくてはならなかった。

遼香はいけないっと言うようにおどけた表情で、

ごめんごめんと謝ってきた。


遥香が退場する時に、ちらっとこっちを見て睨んできたのは、

きっと緑箋の勘違いではないだろう。

遼香は遥香の視線に気づいていたはずだが、

全く気にしていない風を装っていた。


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