第228話 最後の薬学研究部

教室で一通り話したあと、

緑箋は咲耶と須勢理と龍人と一緒に薬学研究部の部室へ行った。

部室には先生を含めて、卒業生以外の部員がすでに集まっていた。


「一年のみんなもお疲れ様。

その顔だと無事に二年生になれるみたいやな」


颯太郎がニヤニヤとしながら話しかけてくる。


「颯太郎と違ってみんなは優秀ですからね。

そんなこと言われても困っちゃうわよね」


華蓮が颯太郎を肘で小突く。


「副部長……あっ、部長の言うようなことはありませんわ。

私たち結構しっかり学習して来ましたからね。

みんな優秀なんですよ。

ね、咲耶ちゃん」


「まあ自分で言うのもなんやけどな。

でもみんな真面目にやったってほんまに思うよ。

それにうちらは同じ班やったしね。

協力してできたんちゃうかな?

なあ、龍人君?」


「あ、ああ、そうだね。

僕は結構必死だったけど………。

でもみんなで一緒の班で勉強できたから、

僕もなんとかついていけたかもしれないね」


「せやねんな。

薬学研究部のみんなで頑張れたんはほんまによかったな。

部室でもみんなごっつ楽しそうにやってくれたし、

後輩やって思えへんくらい助けてもらったなあ。

来年はみんなも先輩になるんやから、

その調子でお願いするわ」


「はい!」


一年生の三人は声を揃えて元気に返事をした。


「ってことで緑箋、緑箋もほんまに薬学研究部にいろいろ貢献してくれたなあ。

もう来年からおらへんってのは寂しすぎるけど、

それこそ聞いたことがないくらいの進路やから、

止めるわけにはいかへん。

いや薬学研究部みんなで応援するで!」


天翔彩も含めてみんなが拍手で称えた。


「ありがとうございます」


緑箋は頭を下げた。


「でもほんまにすごいなあ緑箋。

どうやったらそんなふうになれんねや?」


颯太郎は本当に不思議に思っているようだった。


「特別なことは何も。

ほぼ毎日咲耶さんと一緒にトレーニングをしたことくらいですかね。

ああ、咲耶さんという優秀な先生がいたからかもしれません」


緑箋は咲耶の方を見て笑った。


「そんなことないで。

うちも緑箋君にいっぱい教えてもろたんやで。

でもほんまに楽しかったなあ」


咲耶はいろんなことを思い出しているようだった。


「そうだったんやなあ。

俺もしっかりやらなあかんな。

なあ、華蓮。どや一緒にトレーニングしよか?」


「結構です。

私は私でやりますからね」


「ははは、相変わらずキッツイなあ」


颯太郎と華蓮は笑い合った。


「さあ、これで今年度の薬学研究部も終わりや。

来年度からは不祥、この空風魔颯太郎が部長として、

紅桔梗須勢理が副部長になって、

部員みんなでこの薬学研究部を盛り上げていこう!

そして緑箋、緑箋は薬学研究部の名誉部員として残ってもらうで。

だからまたいつでも帰ってきてええからな」


「ありがとうございます」


こうして緑箋にとって最後の薬学研究部としての活動が終わった。

緑箋はかけがえのない仲間と時間をもらったことを感謝していた。









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