第227話 組の仲間との別れ

「さあ、あまり長話になってもいけないから、

私の話はこれくらいで終わろう。

でも最後にもう一つだけ

緑箋君、前に」


緑箋はいきなり名前を呼ばれて驚いたが、

前に進んで先生の隣に立った。


「みんなも知っている通り、

一年一組の副組長として頑張ってくれた緑箋君は、

今日でこの学校を卒業することになった。

四月からは軍に入隊する。

二年生になって緑箋君と一緒に学べないのは、

私もとても寂しいけれど、

緑箋君もこれから明るい未来に向かってしっかり歩みを進めてくれると思う。

じゃあ緑箋君、一言みんなにもらえるかな」


「あ、はい」


緑箋は一つ咳払いをして身を整えた。


「ええー、急にこういう機会をもらってとても戸惑っていますが、

まず、みなさんにありがとうと感謝を伝えたいと思います。

一年間みんなと一緒に一組で勉強できたことは、私の誇りです。

時には迷惑もかけましたし、

時には支えてもらいましたし、

時には迷惑もかけられましたが、

どれも大切な宝物になりました。

今回、私は縁があって学校を卒業という形になって、

軍に入隊することになりましたが、

この一年間で学んだことを糧に、

そして一年一組として恥ずかしくないように、

新しい道でも頑張っていきたいと思います。

そしてみなさんはまた二年生として、

この学校でたくさん楽しんで欲しいなと思います。

たまには連絡するので、

返信してくれたら嬉しいです。

一年間本当にありがとうございました!」


緑箋は深々と頭を下げた。

緑箋には拍手の雨が降り注いだ。


帰りの会が終わり、

みんなはそれぞれ帰宅していった。

全員緑箋の前にやってきて、

握手や激励の言葉をくれた。


そして緑箋の前に雷御門がやってきた。


「よ、緑箋。四月から頑張れよ!

緑箋みたいな対応をしてくる同級生はいなかったから、

すごく新鮮だったよ。

二年生からお前がいないのは少し物足りないけど、

俺は俺でここでしっかり頑張るから、

お前も俺に恥かかせないようにしっかりやれよ!」


緑箋は雷御門に恥をかかせることにはならないと思っていたが、

出会った時とは全く印象の異なる爽やかな笑顔で、

握手を求めてきた雷御門と固く握手をした。


「もしかしたら俺も軍に入隊することになるかもしれん。

その時は必ず緑箋を追い抜くから、覚悟しておけよ!」


そう言い残して雷御門は帰って行った。


「緑箋君、雷御門様はああいっているけど、

本当はすごく寂しがってるみたいなんだ。

緑箋君と出会って雷御門様は本当に変わったよ。

人間としてまた一つ大きくなったんだと思う。

僕も緑箋君のおかげてすごく変われたと思うし、

雷御門様といい関係になった気がするんだ。

緑箋君ならきっとどこへ行っても大丈夫だよね。

応援してる。

ありがとう、頑張ってね!」


下倉橋は緑箋にそういうと、

慌てて雷御門を追いかけて行った。

考えてみるとやっぱりこの一年で一番成長したのは雷御門かもしれないなと、

緑箋は思った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る