第213話 天翔彩への報告

寮長室を出たあと、

緑箋は部屋に戻って天翔彩に連絡をした。

天翔彩はすぐに通話に出た。


「先生、今大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫だ。

さっき遼香から話は聞いたよ」


遼香は意外とまめにいろんなところに顔を出していったようだ。


「新学期から軍に入るって決めたそうだな」


「はい、先生には大変お世話になりました」


「ははは、まあ確かに最初は結構お世話したかもしれないなあ。

懐かしいな。

でもまあそのあとの活躍は緑箋君の努力の結果だよ」


「いや本当に色々ご尽力いただきましたから、

今の僕があると思ってます」


「まあ、私も教育者の端くれだからな。

ただまだ時間はあるから、

しっかり組のみんなとも思い出を作ってもらわないとな。

ちゃんとみんなには伝えるんだろう?」


「何も言わないでいったほうがいいかなとも思ったんですが、

咲耶さんにちゃんとお別れしないとダメだと言われました」


「そうか、咲耶ちゃんらしいな。

でも、緑箋君も一組の一員だからね。

ちゃんと伝えてしっかりお別れした方がいいと、

私も思うよ」


「はい、そうします。

みんなにもたくさん支えてもらいましたし、

たくさん思い出も貰いましたから、

ちゃんと感謝したいと思います」


「そうしてくれ。

詳しい話はまた決まったら話そう。

こっちの手続きもあるから、

それはまた私がしっかりやらせてもらうよ」


この世界に来たときも天翔彩が全てやってくれていた。

緑箋は本当に感謝しかなかった。


「ありがとうございます。

よろしくお願いします」


「はい、じゃあまた学校で」


天翔彩と通話を終えた。

意外と遼香がいろんなところに挨拶に行っていたことに驚いた。

この正月に、ちょうど交流を持てたところがあったので、

それがいいように作用していたのかもしれない。


一息ついたところで、

組のみんなにどうやって報告したらいいかと頭を悩ませていた。

時間を作って軍に入りますとみんなの前で発表するのも変である。

終業式まではいるのだから、

別に何も言わなくてもいいんじゃないかと、

持ち前の面倒臭さが出てき始めていたが、

じゃあ他の人が何も言わずにいなくなるのも、

それはそれで何か意図があったにせよ、

やっぱり寂しいなあと思う気持ちもあったので、

ここはちょっと集めて話をしておくかという気持ちになり始めていた。


そんなことを考えている時に、

部屋で寝ている龗に目がいった。

最近は結構自由にしているようで、

部屋から抜け出ていることが多いのだが、

果たして龗はどうしたものかと悩み始めてしまった。

勝手に部屋まで着いてきているだけなので、

このまま軍へ入れるわけにもいかないのか、

そもそも軍が許可してくれるのかもわからない。

龗がついてくる気がなくて、

寮に住むことになるのもそれはそれで困るだろうし、

じゃあ山に返しに行った方がいいのかと思うと、

帰りたいならとっくに帰ってるだろうしと、

龗がどういう気分でいるのかがよくわからない。


とりあえず、遼香には連絡して、

どうなるかわかりませんが龗を連れて行けるのかどうかと質問をしておいた。


夕食の後、

咲耶と日課の訓練の前に咲耶に聞いてみることにした。

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