第211話 咲耶との思い出
「咲耶さんと出会ってもう一年だもんね。
ほんとにたくさん魔法のこと教えてもらって感謝してるよ。
咲耶さんがいなかったらこんな風になってなかったと思う。
もらったものが多すぎてあんまり何も返せなくて悪いけど、
本当にありがとう」
「何いうてんねん。
うちだっていろんなこと緑箋君から教えてもらってたんやで。
緑箋君の考え方って結構特殊やねんから、
うちの魔法の考え方に新しい風をいっぱい送ってくれてたで。
目から鱗っちゅうのはこのことやなって。
うちの魔法の実力も結構上がったんは、
緑箋君と毎日のように訓練できたからや。
うちの方こそありがとうやで」
「そっか。
咲耶さんがそんな風に思ってくれるとは思ってなかったよ。
少しでも役に立ててたら嬉しいな」
「せやで。
それにな、いっぱいいろんなところにいけたんも緑箋君のおかげやねんから。
いろんなとこに行って、
いろんな妖怪たちとも出会えて、
めっちゃくちゃ楽しかったんやからね。
あんな体験は絶対にできへんと思うわ」
「そうかな、咲耶さんだったら出会えてたんじゃないかって思うけど」
「そないなことはあらへん。
そもそも緑箋君がおらへんかったら、
結果は全然違ってたやろうしね」
まあ確かに結果は違っていたかもしれない。
単純に挨拶する程度のことで終わっていただろう。
無理難題もあったが、
結果としてとても貴重で楽しい体験だったことは間違いない。
「でもそうだね、本当に楽しいことばっかりだったね。
まあ時には困ったこともあったけど、
それも振り返ればいい思い出だよ」
たった一年間の出来事に過ぎないが、
やっぱり学生時代の一年の輝きは眩しい。
「せやで。
だから緑箋君の一緒にいられへんのはめっちゃ寂しいけど、
別にこれで最後ってわけやないし、
どこに行ったって連絡は取れるし、
会おうと思ったらすぐに会えるんやから、
また一緒に楽しめたらええなって思ってる」
緑箋は本当にいつも咲耶の前向きさに救われている。
寂しいということよりも、
新しい道へ進む緑箋をしっかり応援して前向きな気持ちにさせてくれる。
咲耶にはいろんな魅力があっていろんな素晴らしい能力もあるけれど、
やっぱり一番は周りのみんなを明るく幸せにしてくれることなんだろう。
緑箋はこの一年間で咲耶に何度助けてもらったかわからないほどだった。
そう考えると、
この世界で咲耶がそばにいなくなるってことは少し不安にも感じるけれど、
きっとそんなことを言ったら咲耶は笑って励ましてくれるだろうが、
やっぱり心配をかけるわけにはいかないと、
緑箋はその気持ちは心の中にしまって見つからないように隠しておいた。
「まだもうちょっとあるからね。
もう少し何かみんなで思い出が作れたらいいかもね」
「うん。そうしよう。
それにまだまだ訓練は続けるんやからね」
「そうだね。激しくなりそうだなあ」
「最後の最後にもっと実力つけていかなあかんしね」
一年でこんなに仲良くなった二人は、
きっと寂しさを抱えながらも、
やっぱり前向きに最後まで笑顔でいたいと思っていた。
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