第207話 三学期末組対抗戦の結果

三学期末組対抗戦もあとは残党狩りと言った様相を呈しており、

あらかたの勝敗はもう決していた。


恐ろしいほどの攻撃力を見せつけた、

咲耶の紅龍召喚。

圧倒的な破壊力と精神の強さを見せつけた、

雷御門の雷魔法。

そして誰もまだその仕事ぶりを知らない、

龍人と下倉橋の戦局の道筋をつけた隠密行動。

三つ巴というとても難しい戦場の中で、

その戦術を見事に実現させてみせた、

一組の実力が遺憾無く発揮された戦いとなった。

もちろん他の生徒たちもしっかり自分の役割を行って、

誰も欠けることなく、無事に戦い抜くことができた。


そして何より、今回の一番の影の功労者は緑箋である。

初めの作戦のとき、緑箋は全ての防御を任せて欲しいとお願いしていた。

以前の戦いでは守り切れなかった思いと、

以前の戦いで知った守り抜く力を持つ先人の姿を見たことで、

緑箋はずっとトレーニングルームで魔法探知と防御の両面を鍛えてきていた。

今回こういった組対抗戦になるとは知らなかったものの、

自分の実力を試すには格好の機会となり、

実戦で自分の実力を知れるまたとない機会でもあった。

とはいえ、これは期末試験も兼ねているので、

緑箋の練習としてだけで行うことはできなかった。

そこで一組の生徒たちにお願いすることになったわけだが、

まさか雷御門が緑箋のことを支援するような発言をするとは思っても見なかった。

おそらく他の生徒もそういう気持ちだったようで、

いつも緑箋と仲がいい咲耶たちからではなく、

雷御門の一言ということで、

他の生徒たちも良しと心を決めることができたように思えた。

今回は雷御門に助けられた格好になる。


結局最後まで戦い抜いて、

緑箋は誰一人に攻撃を当てられることなく、

全ての攻撃を防ぎ切ることができた。

おそらく他の組の生徒は誰が防御魔法を使っていたのかはよくわかっていない。

それが緑箋一人で行われていたとは誰も気がついていない。

なので緑箋の力を知っているのは一組の生徒たちだけということになる。

咲耶が長い詠唱を行えたことも、

雷御門が単身突っ込んでも魔法を唱え続けられたのも、

緑箋がしっかり防御し続けたからではあるが、

逆にみんなが緑箋のことを信頼して自分の仕事をしっかりした事が、

今回のこの圧倒的な結果に繋がったのはいうまでもない。

信頼と実力の証である。


一時間が経つ前に、

二組と三組の生徒は全て退場となり、

圧倒的な結果を持って一年一組が優勝となった。

一年一組は退場者数が零という結果どころか、

減った体力すら零という結果で終わった。

一年一組が凄まじい攻撃力だったとしても、

向こうの攻撃を完封できるとはとても思えず、

その結果の凄さをまざまざと見せつけることになった。


試合終了の合図とともに、

一年一組の生徒たちは全員そのまま集まって抱き合って喜んだ。

緑箋も大いに喜んだが、

流石に疲労の色は隠せず、大の字になって横になった。

横には咲耶もまだ寝転んで休んでいた。


「やったね、緑箋君。

有言実行やね」


「何言ってるの、あんなすごい紅龍呼び出されたら、

もううちの勝ち決定じゃない」


二人は笑顔で拳を合わせて健闘を讃えた。

そんな二人を一組の生徒たちが見つけ、

何寝転んでんだよーと言いながら、

生徒たちは二人に雪崩れ込むように覆い被さってきた。


「死んじゃうって死んじゃうって」


緑箋と咲耶はその重みに苦しそうにもがきながらも、

嬉しそうに笑っていた。

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